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欧州最新情報「コロナで大被害を受けたミラノにデザインの彩り戻る!」 Posted on 2021/07/03 Design Stories  

7月2日、10月6日以来初めてロンバルディア州(州都ミラノ)でCovid-19の犠牲者が0だったというニュースが発表された。ロンバルディア州は、イタリアで最初にコロナウィルスが発見された場所で、国内で一番被害が大きかったので、イタリア人には嬉しいニュースだ。
6月28日に、野外でのマスク着用義務がなくなったが、歩道や人混みではマスクを着用している人が多く、また屋内でのマスク着用は、少なくともミラノではほぼ完璧に守られている。

ワクチン接種も、色々試行錯誤はありながらも順調で、昨日まででワクチン接種が完了した人が国民の32,20%、少なくとも一回は接種した人が55,74%となっている。
今までの「ワクチン打った?」「何のワクチン」「2回目いつ?」という挨拶から、「夏休みどこ行くの?」という、7月の定番挨拶に変わりつつある。



観光産業が国民総生産の13%であるイタリアにとって、パンデミックによる観光業界の損害は多大だったが、今年は約60%の国民が夏のバカンスを取り、そのうち87%が国内旅行を選択し、海や山の人気の観光地はソールドアウトの場所も多い。

ちなみに、筆者は、夏休みにイタリア中部にある島の、人里離れた一軒家を借りることを習慣にしているが、去年の秋に感染が再発し今年の予定が組めなかった。ワクチン接種が軌道に乗り始めた今年2月末に予約をしようとしたら、7月中旬から9月初旬まで全く空きの無い状態。さすがバカンス大国イタリア、読みが甘すぎた。

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さて、ミラノと言えばデザイン。デザイン界も少しずつ、しかし確実に動き始めている。

世界から40万人近くが集まる、世界一大きなデザインの祭典「ミラノサローネ」。パンデミックの影響で、2020年4月の開催が6月に、そして2021年4月に延期された。そして、今年初めのコロナ感染状況が世界的に良くなかったため、今年も中止になるだろうと予測されていた。しかし、最終的には「特別展 SuperSalone」という形で、規模を大幅に縮小し、建築家のステファノ ・ ボエリ (Stefano Boeri) 氏をキュレーターとして 、9月5日から10日まで、展示会に近い形で開催されることが決定した。

この状況下で賛否両論だったが、デザイナーや家具業界は9月に向けて準備に追われている。

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もう1つ、ミラノデザイン界の大きな話題は、ADI* Design Museumが紆余曲折を経て5月25日ついにオープンしたことだ。
* ADIとは、イタリアのインダストリアルデザイン協会で、デザイン賞「コンパッソ・ドーロ(黄金のコンパス)賞」を主催

当初、ミュージアムのオープンニングを2020年6月、内覧会を4月のミラノサローネの期間に予定していたが、パンデミックの影響による建築の遅れ、修復作業に関わる土地の問題等で約1年の延期を余儀なくされた。

ミュージアムは、1954年にジオ・ポンティの発案により創設された世界最古のデザイン賞「コンパッソ・ドーロ」の歴史的なコレクションを展示している。
デザイン好きな人であれば誰でも知っているような有名な製品をただ並べるだけではなく、成功した製品の最初のアイデア、図面、データシート、試作品、広告なども展示されている。

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一つの製品を形にするために、多くのテストや試作が必要だったことが良くわかり、多くのデザイナーの才能と、挑戦する企業家、職人、技術者のつながりを実感できる興味深い展示で、じっくり見ていると半日くらいすぐ過ぎてしまう。

去年のミラノサローネ中止になって以来1年半、ミラノにデザインの風が戻り始めている。(椎)

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