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パリ最新情報「フランス人を癒やす昭和の日本の風景」 Posted on 2021/09/22 Design Stories  

パリ最新情報「フランス人を癒やす昭和の日本の風景」

ランドセルを背負ったオカッパ頭の女の子「Momoko」。
パリ在住の日本人絵本作家Kotimi(コチミ)さんが描く、自身の幼少期のエピソードが詰まった絵本「Momoko」を中心とした展覧会が、2021年9月1日から10月2日まで、パリ日本文化会館で開催中だ。「KOTIMI, VISAGES D’UNE ENFANCE JAPONAISE」と題され、日本語の副題は「あのころのわたしたち」。昭和の日本の風景を切り取った絵本の原画が並び、パリジャン、パリジェンヌを魅了している。

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水彩とクレヨンで描かれた優しいタッチに、ユーモラスな表情。使用している画材の展示コーナーにメトロの切符があったのだが、これもまた質感をつけるための道具のひとつ。硬めの紙質、大きさが画材として使いやすいそう。更に興味深いのが、画像加工ソフトPhotoshopを使って仕上げているという点。手書きにデジタルのテクスチャを加えることで、更なる温かみを加えている。デジタル処理と聞くと、カチッとしそうだが、Kotimiさんは偶発的に生まれる効果を楽しんでいる。そのため、展覧会では手書きの原画と、デジタル処理を施したものが上下に並んでいた。

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地球カレッジ

舞台は1970年代の日本だが、日本人には昭和50年代といった方がイメージが湧きやすいかもしれない。ちゃぶ台と縁側、移動式金魚店、バキュームカー、日本人には懐かしいけれど、フランスの人がみてどう感じるのかが気になり、数名にインタビューを試みた。

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一つ一つの絵に対してとても熱心に議論をしながら見て回る、3人組のマダム達。聞けば、出版業界、図書館司書、書店勤務、と絵本業界プロの方々だった。コロナ禍でロックダウン中に出版された「Momoko」を献本されたひとりが、同じ業界の仲間にもぜひ見せたいと、誘い合わせて来ていたのだ。絵のタッチの軽快さ、異文化で起こるユーモアなエピソードが魅力といい、3人とも、たくさんの人に読んでもらいたい本だと話していた。特に図書館司書の方は、子どもだけではなく、大人にもぜひ知ってもらいたい、と自身の図書館で特集を組む予定。

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また、両親、友達と来ていた小さなパリジェンヌも、楽しそうに展示を見て回っていた。日本人の友達がいるので、日本文化が気になるそう。彼女が気に入った絵は、金魚売りのシーン。「フランスには移動する金魚売りはいないけれど、ワゴンで売っているアイスクリーム屋さんはいるわね」と、お母さん。見たことが無いものでも、身近にあるものに置き換えて説明する姿が印象的だった。

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また、展示されている昔の教科書をみて「カワイイ!」と、パリジェンヌちゃん。これらのモノたちは、Kotimiさんの私物で、日本への一時帰国の度、少しずつフランスに持ってきたものだそう。当時、使われていたモノが絵の横に並ぶことで、見る人の興味と理解がより高まっているようだった。

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展覧会期間中、毎週土曜15時から17時に、Kotimiさんは在廊予定。サインだけではなく、ひとりひとりに、丁寧に水彩とパステルでMomokoを描いてくれる。絵の具が乾くまで本を閉じることができないかと思いきや、空気が乾燥したフランスでは、描いている先から乾いていく。

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フランスには存在しないものが絵本に出てくることに対して、その謎めくエキゾチックさも魅力だと語るフランス人もいた。最近のパリでは、日本風の駄菓子屋や、横丁を再現したラーメン屋など、昭和の日本をテーマにしたものをよく見るが、国は違えどノスタルジーに浸り、癒やされるのかもしれない。(ウ)

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