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パリ最新情報「ジャック・シラク元大統領が愛した、セーヌ河畔の美術館」 Posted on 2021/12/07 Design Stories  

 
7区にあるミュゼ・ドゥ・ケ・ブランリ(Musée du Quai Branly)は、パリで一番エキゾチックな美術館。
エッフェル塔にほど近いリュクスな場所に存在し、アジア・オセアニアなどで生まれた、ヨーロッパ以外の芸術を展示する美術館だ。
2006年には正式名称にジャック・シラク元大統領の名が追加され、現在は「ケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館」としてパリ市民に親しまれている。
 

パリ最新情報「ジャック・シラク元大統領が愛した、セーヌ河畔の美術館」

 
以前、セーヌ河岸のこの一帯はケ・ブランリ(ブランリ河岸)と呼ばれていたが、11月29日には「ジャック・シラク河岸」と改名された。
改名式にはパリ市長のアンヌ・イダルゴ氏や政府報道官のガブリエル・アタル氏も列席し、「2019年に他界したジャック・シラク元大統領の名前を河岸に永遠に定着させる」ことを宣言した。


ジャック・シラク元大統領といえば、大の日本通としても知られる人物だ。
そして、アジアやアフリカの民族芸術に対する造詣の深さと審美眼もまた、大統領になるずっと以前から培われていたという。
そんなシラク元大統領の肝入りで誕生したのが、「ケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館」なのである。
 

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開館から21年経った今年、美術館では「ULTIME COMBAT(究極の戦い)」と称した、アジア武道に関する特別展が期間限定で開催されている。
これは、アジア文化の展示に力を入れる同美術館が、インド、中国、日本の体技に関する約400点の作品を紹介するもの。
例えば中国からは西遊記やブルース・リー、日本からは宮本武蔵や柔道家の加納治五郎といった偉人が紹介され、デジタル展示と並行して行われた。
 

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日本のパートでは、おもに「武士道」がメイン。
日本のサムライ人気は今に始まったことではないが、ケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館ではこれをかなり詳しく説明している。
なぜサムライから派生して武道となったのか、武士道精神からくる礼儀やおもてなし、丁寧なモノづくりなどなど、日本人が観ても勉強になることが盛りだくさん。
 

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ちなみに、オリンピックで柔道チャンピオンを出すほどになったフランスは、柔道人口が日本より高い。
フランスでは柔道が教育的な捉え方をされていて、子どもにやらせたいスポーツとして人気があるようだ。
ということで、この特別展はフランス人にも大好評。
コアなエクスポジションではあるものの、子供の姿も多く見られ、期間中は少林寺拳法のレッスンなどが開催される。
 

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新しく「ジャック・シラク河岸」と名付けられたこの通りには、ケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館のほかに、日本文化会館がある。
パリ市長のアンヌ・イダルゴ氏は、「シラク元大統領は、日仏の友情の証です」とパリ議会で言及し、日仏友好の懸け橋となった彼の功績を讃えた。


ケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館は、フランスが他のヨーロッパ諸国の先陣を切って表明した、西洋中心主義からの脱皮を示す斬新な美術館でもある。
また、建築のモダン性だけでなく「収蔵作品の故郷の原風景に近づけた」庭園も、美術館が誇る傑作のひとつ。
「人工的な庭園設計は自然を破壊することにつながる」という景観建築家ジル・クレモン氏の警鐘に従い、可能な限り機械を使わず、今でも人の手によって手入れされているとのことだ。
 

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自然光を重視する他の美術館とは違い、ケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館は照明が極限まで落とされている。
シアターのような雰囲気も、ライトアップされた作品も非常に幻想的で、パリの芸術シーンをより豊かに彩る。


世界中の未知の文明・文化を訪ねる旅の玄関口であるかのようなケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館。常設展も特別展も、他を寄せ付けないオリジナル性があって面白い。
パリのセーヌ河畔という静けさと、熱気あふれる展示のコントラストがとても印象的な場所である。(ル)
 

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