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パリ最新情報「マスク無し、30分のスポーツ、契約教師。新学期スタートのフランス新情報」 Posted on 2022/09/02 Design Stories  

 
9月1日、フランス全土で約1,200万人の生徒と80万人以上の教師が学校に戻った。
2022年度のスタートではさまざまな変化があり、厳しい健康対策なしで始まっている。

最も変わったのは、学校が特に制限のない「コロナ禍前の状態」に戻ったことである。
8月末日のフランスにおける新型コロナ感染者数は19,240人。
感染者数が減少していることもあり、今年の新学期は小学校から高校まで、マスクの着用義務なしの対面授業が行われるようになった。
子どもたちの手洗いも、窓を開けての換気も義務ではなくなったが、流行を繰り返さないための「推奨」は続く。
 



パリ最新情報「マスク無し、30分のスポーツ、契約教師。新学期スタートのフランス新情報」

 
屋内外を問わず、身体活動の制限がなくなったことも大きな変更点である。
小学校では、1日30分のスポーツが義務化されるようになった。
これは新年度のもう一つの新システムで、ジャン=ミシェル・ブランケール前教育大臣が以前から掲げていた目標である。
2020年におよそ7,000校で試験的に実施されていたが、9月1日からは全国で一般化される。
子どもたちの運動不足を解消する狙いがあるものの、7月末に急遽決定したため、教師や学校の責任者からは「内容が曖昧で準備不足」「国より具体的な指示が来ていない」との声が上がっている。
 

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一方、教員不足は現在のフランスで深刻な問題となっている。
そのため8月25日には、マクロン大統領が教師および学校関係者の給与を10%引き上げると発表。(2023年より)
これによって初任給で手取り2,000ユーロ(約278,000円)を下回る教師はいなくなり、年功序列にかかわらず、すべての教育関係者が10%の賃上げとなった。

またこの新学期には、新たに約3,000人の契約教師がフランス国内で採用された。
その数は全体の教員数の1%にも満たないが、教員というポストにおいてこれほど多く存在したことはないという。
それでも人員不足は続いており、約4,000人近い穴が未だに埋まっていない。
 

パリ最新情報「マスク無し、30分のスポーツ、契約教師。新学期スタートのフランス新情報」



 
インフレの影響は学校生活にも及んでいる。
フランスでは、文房具代やスポーツ用品代が昨年より大きく上昇してしまった。
これに対処するために、仏政府はいくつかの補助策を講じている。例年、フランスでは新年度の準備のための「新学期手当」が支給される。
これは1人でも子どものいる家庭に支払われる手当で、2021年度は6〜10歳の子ども1人あたり370.31ユーロ(約48,000円)、11〜14歳では390.74ユーロ(約51,000円)、15〜18歳では404.28ユーロ(約52,500円)が8月中に支給された。(親の所得制限あり)

今年の新学期手当はさらに値上げされており、前年比1.8%の引き上げプラス、追加で4%の引き上げが行われた。
また2022年度のみ例外として、100ユーロ相当のボーナス支給が、低所得世帯に向けて9月15日に支給される予定となっている。

コロナ対策は緩和されたが、インフレの影響や教員不足が新たな課題となっているフランス。しかし国の厚い手当は、少子化を食い止める一つの対策にもなっている。(大)
 

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