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パリ最新情報「パリ市、『50℃のパリ』に向けて動き出す。将来の熱波に対するシュミレーションを決定」 Posted on 2022/10/04 Design Stories  

 
この夏、歴史を塗り替える猛暑に見舞われたフランス。
国内各地で40℃超えの日が相次ぎ、エアコンを持たない大都市パリは特に非常事態に陥っていた。
ところが仏気象学者のロベール・ヴォータール氏は、こうした状況は今後も間違いなく続くと指摘している。
同氏によれば、フランス国内における熱波の「頻度」「強度」「長さ」が年々増しており、今後10年のうちに最高気温が50℃を記録する可能性が十分にあるとのことだ。

このような事態に備えるため、パリ市は気候に関する組織「Paris à 50 °C(50℃のパリ)」を今年7月に初めて設置した。
そして設置から2ヶ月が経った9月28日、市は具体的な対策を踏まえた上で、2023年の10月13日に市民を動員した大規模な予行演習を行うと発表した。
 

パリ最新情報「パリ市、『50℃のパリ』に向けて動き出す。将来の熱波に対するシュミレーションを決定」



 
パリ副市長でレジリエンス担当のペネロペ・コミテス氏はまず、パリ市は近年、猛暑以外にもさまざまな危機にさらされてる、と述べている。
2018年におけるセーヌ川の氾濫、パンデミック、ノートルダム寺院の火災、ウクライナ危機による電力・食糧危機など、予期せぬ事態がこの5年のうちに頻発していることを例に挙げた。

今から5年前の2017年には、パリ市はすでに危機管理戦略の一環として35項目の改善すべき具体例を発表していた。
その中にはセーヌ川の水質向上や学校周辺の緑化などがあり、一部の項目はこの数年のうちに達成されていたが、副市長は「我々は予想を超える事態にさらに備えなければならない」としている。
 

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今回発足された組織「50℃のパリ」は、この戦略を刷新し新たに設けられた14項目のうちの一つである。
具体的には、これまでに経験したことのない50℃という状況をシュミレーションし、さらに熱波期間が2022年夏より長く続くことを想定している。
またこれは熱波だけでなく、スコールによるセーヌ川の氾濫で「物資がパリに入らなくなる状況」を想定するものでもあるという。

2023年10月13日に予定されているのは、パリ首都圏にある二つの地域(セーヌ・サン・ドニ県ともう一つは未定)に50℃の熱波が襲来するというシナリオだ。
二つの地域では、未曾有の熱波を想定した予行演習が自治体関係者と市民の間で行われる予定で、50℃の気温下における屋内ロールプレイングのほか、移動式の霧吹きミスト・冷房室がどのように作用するかが屋外で検証される。
パリ市はその後、住民の意見をフィードバックしながら教訓を学び、その結果を踏まえ首都圏の生体や経済活動に及ぼす影響を細かく分析する予定だという。
なおそれまでの一年間のうちには、パリ市庁舎を中心としてさまざまな気候対策のイベント・ワークショップが開催されることになっている。
 



パリ最新情報「パリ市、『50℃のパリ』に向けて動き出す。将来の熱波に対するシュミレーションを決定」

 
パリ市は過去5年間に出現したさまざまなリスクを考慮し、将来起こりうる被害の縮小に向けて動き出した。
直近ではインフレや電力不足が大きな問題となっているが、「50℃のパリ」という組織名のインパクトは非常に大きく、今までにないほど現実味を帯びたものとなった。(オ)
 

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