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パリ最新情報「パリ市、冷房使用中のドア開放を禁止へ。イルミネーション広告も制限される」 Posted on 2022/07/27 Design Stories  

 
パリ市は7月25日より、冷房使用中の店舗において、ドアを解放したままの営業を禁じている。
この政令は、パリにおける地球温暖化の影響が甚大であることと、ウクライナ危機に伴うガス不足を背景に省エネが急務であることを動機として打ち出されたものだ。
違反店舗には最大で150ユーロ(約21,000円)の罰金が科されるが、テラスを設けている飲食店は禁止措置の対象外となった。

それだけではない。
仏エコロジー移行相のアニエス・パニエ=リュナシェ氏はさらに、全国的に午前1〜6時のイルミネーション広告の禁止を拡大する方針を発表した。
これは街の規模に関わらず義務付けられるもので、空港を除き、違反した企業には1,500ユーロ(約21万円)の罰金が伴うという。
ただこの法令は初めてではなく、フランスでは人口80万人以下の都市ですでに始まっていた。
今回フランス政府は、高まる省エネの機運を受け対応を急いだものとみられる。
 

パリ最新情報「パリ市、冷房使用中のドア開放を禁止へ。イルミネーション広告も制限される」



 
迫りくる電力不足に対し、欧州では節電ムードが広がっている。
フランスではそもそもエアコン普及率が少ないのだが、一方でエアコン完備の店舗は今年の猛暑でそれをフル稼働させている。
そのため、冷房の効いた場所には例年より人が多く集まっている、という印象も受けた。

パリの大型デパートなどはドアマンがいるため、開閉時に気を揉む心配はない。
しかし、たとえば世界的にチェーン展開するファッションストアの多くは、確かに冷房を効かせたままドアを開けっぱなしにして営業を行っていた。
このように、パリでは冷房があるないに関わらずドアを開放したままの店が多くあり、行政はそれを以前から問題視していたという。

パリ市エコロジー担当のダン・レール氏は、「特に大手ブランドの経営者は、集客だけを考えている。無責任だ」と糾弾する。
エネルギーの無駄遣いを「異常な習慣」とし、今回の政策を徹底する構えだ。
 

パリ最新情報「パリ市、冷房使用中のドア開放を禁止へ。イルミネーション広告も制限される」

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ところがルールが適用された25日以降、小さな店舗では少なからず反発の声も上がっている。
こうした店舗では、エアコンは猛暑対策としてお客様を店内に呼び込むために新たに取り付けられた。
しかし、小規模な商店では「ドアを閉めたままだと店に何か問題があると思われる」とし、コロナ禍で激減した利益をどう回収するか頭を悩ませているという。
そのため初日25日のパリでは、店舗の前でスタッフが呼び込みを行う姿もキャッチされている。
中には「大手ブランドは自動ドアを取り付ける予算がある。我々にはない。パリ市長は店を経営したことがないから分からない。仮に150ユーロの罰金を払っても、絶対にドアを閉めない」と断言する店主もいたとの報道があった。
 



パリ最新情報「パリ市、冷房使用中のドア開放を禁止へ。イルミネーション広告も制限される」

 
パリ副市長のニコラ・ノルドマン氏はこれを受け、25日夜に「一部の客足が遠のくことを恐れる気持ちはよく理解している」とコメントを発表した。
「店主の皆さんは、この政令に従うかどうかは自由です。しかし従えばそれだけでエコになる。何度か拒否すれば罰金が増え、営業停止さえあり得ます」とし、当面の間は違反店舗に即罰金を課さず、市の担当者を派遣して指導していく方針を固めた。

冷房の効いた部屋のドアを閉める、というのは当たり前の感覚のように思えるが、エアコンに慣れないパリは突然の対策に四苦八苦している。
猛暑に加え、ウクライナ危機による電力不足はフランスに限らず欧州全体でも深刻だ。
なおドア開放の禁止はパリだけでなくフランス全土に適用される予定だというが、冬に向けての省エネ対策がさらに増えるような気がしてならない。(オ)
 

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