パリで和食がブームとなってから長い年月が経つ。
最近ではMAKI ROLL（巻き寿司）、TATAKI（牛肉のたたき）、MOCHI（大福）など、フランス人が和食をフランス流にアレンジするというトレンドも起きている。
そして近頃、パリで静かに動き出しているのが、日本のあの“ライスバーガー”なのであった。

日本のライスバーガーといえば、有名ファーストフード店の「海鮮かき揚げバーガー」や「焼肉ライスバーガー」を思い出す。
定期的に食べたくなってしまうあの味だ。
こうした日本のメニューを、旅行中に見つけて虜になってしまったパリジェンヌがいるということで、パリ10区のライスバーガー店「Chez Marie（シェ・マリー）」に足を運んでみた。
 

 
オーナーのパリジェンヌ・マリーさんは、13年もの間、世界中を船で旅していたというユニークな経歴の持ち主。
彼女は当時、寄港地のひとつであった日本のライスバーガーに大変な興味を抱いたという。
「アメリカのハンバーガーと日本の味、2つの食文化の融合が絶妙なバランスを保っていると感じました」と話してくれたマリーさんは、パリなら受けるのではないかと考え、2018年に小さなビストロ「Chez Marie（シェ・マリー）」をオープンした。
 

 
さて登場したのは、リコッタチーズ、ほうれん草、ズッキーニ、フライド・オニオンの、何ともお洒落な「ベジ・ライスバーガー」だ。
ご飯は酢飯（フランス人は酢飯が大好き）を使っておりとてもソフトな舌触りで、ナイフとフォークでいただくことになる。
ベジタリアン向けとはいえ食べ応えは十分で、少しリゾットのような食感もあった。
フランス人からの評判はとても良いということで、正統派のライスバーガーから西欧流にアレンジしているところがやはりポイントなのだそうだ。
 

※アットホームな雰囲気の「Chez Marie（シェ・マリー）」。中心地から少し離れているので、客層も地元パリジャンが多い

※他メニューのチキンと茄子の煮込み

 
また一方で、2022年暮れに新規オープンを果たしたライスバーガー店もある。
こちらはライスバーガーならぬ「スシ・バーガー」を名乗ったメニューが主役で、開店当時には仏情報誌に随分と取り上げられていた。
 

※パリ初のライスバーガー専門店「Kimochi」

 
日本の居酒屋をイメージしたオープンキッチンが特徴の「Kimochi」は、パリ最古のアーケード街「パッサージュ・デ・パノラマ」の中にある。
メインはもちろんライスバーガーなのだが、その他の定番メニューにはNIGIRI、まぐろのTATAKI、カリフォルニアロールなどが並んでいた。
 

※鰻とアボカド、鰹節、ルッコラ、きゅうりのライスバーガー、ライスにはパン粉が

 
こちらのライスバーガーもかなりオリジナル。
というのは、ライス部分にパン粉がまぶしてあるため、食感が“焼きおにぎり”以上にカリカリ、クリスピーだったからである。
注文したのは一番人気という「鰻のスシ・バーガー」。
とはいえ寿司の要素はなく、新しいタイプのライスバーガー、といった印象だ。
カリカリのパン粉が唇に当たって痛い、というのを除けばとても美味しく、鰻アボカド丼のようなお味であった。
※フランス人にはパン粉、鰻のタレも大人気。
また他のスシ・バーガーにはスパイシーツナ、サーモンタルタル、トリュフ尽くしといったメニューがあった。
 

※サーモン、アボカド、フライドオニオンのスシ・ロールも

 
パリにおけるライスバーガーは、ブームというわけではなく、静かにその存在感を示している、といったイメージだ。
ただフランスのビストロでは「2つの食文化の融合」が勢いを増しているらしく、我々日本人にも新しい発見をもたらしてくれる。
次はどの和食がフランス人の目に留まるのだろうか。（セ）