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パリ最新情報「フランスで米不足が深刻化、マスタードに続きスーパーから消える可能性も」 Posted on 2022/10/18 Design Stories  

 
今、フランスから米がなくなりつつある。
フランスは基本的にはパン食だが、一方で多彩な米料理も存在しており、バスマティ米(長粒米)を中心に家庭やレストランでよく消費されている。
ところがフランス米組合(la Rizerie Française)は10月16日、「2023年の2〜3月を皮切りに今後大規模な供給の混乱が起こるだろう」と警告、続いて仏番組BFMも「ウクライナ危機と地球温暖化の影響で、世界の米生産量がここ数ヶ月で激減している。これは、フランスの消費に影響を与える可能性のある新たな警鐘である」と報じた。

大きな原因には9月、フランスにおける米の主要輸入国であるインドが輸出制限に踏み切った件がある。
インドは国内供給を優先するため破砕米の輸出を禁止し、他種米にも輸出関税を導入している。(欧州関税では1トン当たり30ユーロから65ユーロに引き上げられた)
しかしその後は追い討ちをかけるように熱波と洪水が重なり、バスマティ米含む少なくとも25万トンの米、および物資の輸送に必要なインフラ(道路、橋など)が破壊されてしまった。
 



パリ最新情報「フランスで米不足が深刻化、マスタードに続きスーパーから消える可能性も」

 
フランス国内の米生産量は毎年5万トンであるが、その5倍近い24万トンを輸入して国民の需要を賄っているというのが現状だ。
特にバスマティ米は仏スーパーにおける米消費量の45%を占めており、常時ストックしているという家庭も非常に多い。
フランス米組合のティエリー・リーバン会長は、戦争や気候変動といった諸々の事情により、今後フランスで輸入米の供給が大幅に滞るか、あるいは完全に枯渇する可能性があるとしている。
実際、スーパーの米売り場では空きが目立ち、一部ではバスマティ米が完全に品切れという事態にもなっている。
 

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なお欧州全体の米生産量は年間300万トン弱であるが、各国(特にイタリア、スペイン、ギリシャ)では今夏の干ばつの影響で米が育たず、例年に比べ20〜25%の収量減だと報道された。
また価格の上昇も顕著であり、2022年9月の店頭価格は昨年に比べ12%以上も上がっている。(バスマティ米500gでは現在約2.68ユーロ、およそ375円)
ただフランス米組合によれば、現段階では在庫があったためこの程度に留まっており、年末から2023年初頭にかけてはさらなる価格上昇が必至であるとのことだ。
 



パリ最新情報「フランスで米不足が深刻化、マスタードに続きスーパーから消える可能性も」

 
物価上昇はフランスでも勢いが止まらず、10月16日(日)にはパリで物価高に反対する大規模なデモ行進が行われている。
当日の参加人数は約14万人と報じられ、一部では過激化し4人の逮捕者が出る騒ぎにもなった。
物価高の他にも9月から続くガソリン不足、政府の気候変動対策への不満などが叫ばれたが、その中に「ロシアへの経済制裁の代償」を訴えた人々がいたのが印象的だった。

現在、フランスでは食品の値上げや欠品等が相次いでおり、特にマスタード不足はここ数ヶ月の間ずっと続いている。
今後はそのリストに米が加わるのが避けられないが、すでにインフレが進行している状況下では過去に例を見ないほどの価格上昇が懸念される。(内)
 

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