欧州最新情報

パリ最新情報「2022年夏、フランスでは空前のロゼワインブームが訪れる。天候や社会情勢の変化を受けて」 Posted on 2022/08/30 Design Stories  

 
フランスでは日の入り時刻が早まり、朝晩は冷え込むなど、秋の足音が聞こえるようになった。
約3か月続いた猛暑は記憶に強く残るほど激しいものであったが、一方で売上が驚異的に伸びた商品もある。
それは、フランスが世界ナンバーワンの生産量を誇るロゼワインだ。
仏統計会社NielsenQの調査によると、2022年5月から7月にかけてはロゼワインの売上が前年比で+9.8%も増加、ビールの伸び率を優に超えたという。

消費率で言えば、ビールは例年通りフランス国内で最も飲まれているアルコールである。
しかし原材料高騰の影響を受け、ビールメーカーは値上げせざるを得なかった。
そのため缶、瓶、樽ともに全体で3%の増と、猛暑にしては期待値より売れなかったということになる。

ここまでロゼワインが伸びた理由には3つあり、そのうちの1つは発売が5月に前倒しになった件である。
つまり2021年より約1ヶ月早く販売されたことにより、5月の第3週には既にロゼワインが赤ワインの売上を上回っていた。
 

パリ最新情報「2022年夏、フランスでは空前のロゼワインブームが訪れる。天候や社会情勢の変化を受けて」



 
ちなみに赤ワインの売上は前年比-8.5%と、フランス国内では不調だった様子。
ワインのコンサルタント会社、テロワール・マネージャーはこれを、「楽しく生きるためのロゼワインであり、知識のためのワインではない」と分析する。
つまりある程度の知識が必要な赤ワインより、食前酒から気軽に楽しめるロゼワインの方が、猛暑のフランスで人気を博したということになる。

確かにパリのカフェ前を歩いていると、今年はロゼワインを楽しむマダム・ムッシュを見かける回数が多かった。
通常赤ワインは肉料理やチーズとともに飲むアルコールであるが、アペロタイム(夕食前に軽く一杯のお酒とおつまみを楽しむ時間)から登場するロゼワインは、猛暑に生きるフランス人に特に好まれたようだ。
こうして「夏=暑い=ロゼワイン」といったイメージも相まって、ロゼワインの需要が高まった、というのが2つ目の理由となる。
 

地球カレッジ



 
最後は、フランスに訪れた観光客がロゼワインの売上アップに貢献したという件だ。
例えばフランスを目指す観光客の多くは、パリと南仏に集中する。
観光業が復活したということもあり、現地のホテルやレストランは2019年以来の賑わいを見せていた。

ロゼワインの産地として有名なプロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地方では今夏、ホテルの稼働率が80%を越えたという。
そのため現地のワイン店ではロゼワインが飛ぶように売れた。
南仏ボルム・レ・ミモザのワインショップ店主などは「ロゼのボトルをこんなにたくさん売ったことはない。今シーズンはロゼが売上の80%を占めている」と仏テレビ番組で語ったほどだ。
 

パリ最新情報「2022年夏、フランスでは空前のロゼワインブームが訪れる。天候や社会情勢の変化を受けて」



 
と、盛況なロゼワイン市場であったが、心配なのは今年のブドウ収穫についてである。
今年収穫されたブドウの品質は概ね良好との報道があった。
しかし温暖化の影響で、フランスでは年々収穫時期が早まっているとのこと。
秋に行われていた収穫がどんどん前倒しになり、フランス南西部のラングドック地方では早くも7月後半に収穫が行われていた。
また干ばつの影響でブドウがしぼみ、アルコール度数が高くなることも懸念されている。
通常ワイン収穫時には季節労働者が必要なのだが、来年以降もバカンスシーズンと被るとなると、人材不足の問題も免れない。
2022年のフランス産ワインがどうなるか、一部では不安の声も上がっている。

とはいえ、来年以降もロゼワイン人気は続きそうだ。
ワインのコンサルタント会社、テロワール・マネージャーは「ロゼを評価するのに、優れたワイン通である必要はありません。特にロゼは、どんな懐具合にも手が届く価格帯を維持しています」とし、インフレに戦々恐々とするフランス社会の現実をも浮き彫りにした。(内)
 

自分流×帝京大学
第6回 新世代賞作品募集