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パリ最新情報「パリ市、象徴的なモニュメントの消灯時間を相次いで繰り上げへ」 Posted on 2022/09/27 Design Stories  

 
ロシアによるガス供給停止問題で、この冬は欧州全体で深刻な電力不足が危惧されている。
フランスでもいたる所で対策が講じられているが、パリ市は全体で10%の節電を行うことを発表しており、9月半ばからはエッフェル塔やルーブル美術館など象徴的なモニュメントの消灯時間が早まっている。

フランスのリマ・アブドゥル=マラック文化大臣は「国民の意識を高めるべく、シンボル的な意思表示は大変重要だ」と述べた上で、まずはルーブル美術館とヴェルサイユ宮殿の消灯時間を早めた。
これによってすでにルーブル美術館は午前1時から午後11時に(ピラミッド部分)、ヴェルサイユ宮殿は午後10時に照明がすべて消されている。
 

パリ最新情報「パリ市、象徴的なモニュメントの消灯時間を相次いで繰り上げへ」



 
9月23日(金)には、パリ市が管轄するエッフェル塔の消灯時間が午後11時45分に早められた。
これは歴史上初めてのことで、日没後1時間ごとに見られたシャンパン・フラッシュも23時を最後に作動しなくなる。
そのため、周囲のビジネスでは一時的な陰りが見え始めている。
周辺のセーヌ川ナイトクルーズでは1日に50人ほどの乗客が減るだろうとされており、土産物屋やクレープ、ワッフルなどの屋台は売り上げの4割が減ると言われている。
 

パリ最新情報「パリ市、象徴的なモニュメントの消灯時間を相次いで繰り上げへ」

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ただエッフェル塔を訪れる観光客は一定の理解を示しているという。
初日の金曜日には早期消灯を知らなかった観光客もいたというが、彼らは「暗闇でもエッフェル塔は美しい」「このような活動をすることは素晴らしいこと。
ドイツでも同じように、重要なモニュメントのほとんどは消されています」と仏メディアのインタビューで答えている。

なおパリ市内では、同じ23日にパリ市庁舎やサン・ジャックタワーの消灯時間が午後10時に早まった。
しかしマラック文化大臣はこれらの措置だけでは不十分だとしており、今後は映画館、劇場、美術館でも対策を取る予定があるとのことだ。
例えばオルセー美術館ではすでに館内の電球がLEDに変えられており、これによって全体の消費電力が全体の3分の1になった。
パリではこれを全館で行う予定があるといい、映画館ではプロジェクターへの買い替えが検討されている。

またシャンゼリゼ委員会も2022年冬の節電計画に参加している。
11月20日からはクリスマスイルミネーションの点灯期間が7週間から6週間に短縮され、消灯時間も23時45分と、例年より2時間15分早くなる予定だ。

パリは17世紀以来「光の街」という名でも呼ばれていたが、アンヌ・イダルゴ市長は「光の街は光の街であり続けます。
なぜなら光はアイデアでもあるからです」と答えており、こうしたエコロジー政策に一定の熱意を持っている姿は、世界の観光客にとっても良い影響を与えるだろう、としている。
 

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このまま何もしなければ、今冬の電気代はパリ市全体で約3000万ユーロ(およそ42億8000万円)値上がりするだろうと言われている。
そのため公共施設の設定温度は通年より一度低い18度に、夜間は12度に設定されるほか、朝方の暖房開始時間は通年より30分遅くなる。

最近では気温も低く、雨の天気が続くなどフランスはいよいよ秋冬期間に突入した。
冬の電気代を心配した国民の間では暖炉用の薪の需要が非常に高まっているというが、その分納期が3〜6ヶ月と遅くなっており、希望した人全員に配られるのは春以降になるかもしれないという。
しかしそんな薪も、購入量と加工用エネルギーの増加に伴い平均で15%程度の価格が増加している。

ただフランスにおける秋冬の天気予報では、秋に雨が多く降るが雪は少なく、今年は全体を通して気温がそれほど下がらないと発表された。
「雨の復活、暖冬、この二つは我々にとって朗報だ」と仏メディアは伝えているものの、大停電という最悪の事態を避けるため、国を挙げての節電対策はまだまだ続くと思われる。(内)
 

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