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パリ最新情報「ドル高ユーロ安、アメリカ人富裕層がパリの不動産市場に復活」 Posted on 2022/08/18 Design Stories  

 
2022年に入ってから、パリではアメリカ人観光客の数が一気に増えた。
中心部では英語が飛び交い、高級ブティックの前にも列ができるなど、パリの観光業はすっかり息を吹き返したように見える。
ところが国内に目を向けてみると、インフレやウクライナ危機による燃料費高騰の問題が無くならず、庶民の生活は圧迫されたままだ。

ユーロ安も懸念されている。
外国為替市場ではユーロ安が急速に進んでおり、7月12日には1ユーロ=1ドルの等価を割り込み、2002年以来の最低水準をマークした。
ユーロの対ドル相場では過去1年間で15%も下落しているという。
このユーロ安に拍車をかけたのは、ノルドストリーム1関連によるドイツのエネルギー問題と、イタリアのドラギ首相の辞任というイタリア政府の混乱である。
つまりこのドル高ユーロ安が、アメリカ人観光客を欧州に呼び寄せるきっかけになっているというのだ。
 

パリ最新情報「ドル高ユーロ安、アメリカ人富裕層がパリの不動産市場に復活」



 
それは観光業だけではない。パリの高級不動産市場においては、アメリカの富裕層および超富裕層の顧客が年明けから増えている。
パリの不動産会社Junot Immobilierによれば、2022年1月以降、フランス国内では不動産購入の12%が外国人によるもので、その90%がパリに集中しているとのこと。
なおパリにおける300万ユーロ(約4億1千万円)以上の売り上げでは、その20%が外国人によるもので、うち21%がアメリカ人の超富裕層によって購入されているという。

彼らに人気のある場所はシャンゼリゼ大通りのあるパリ8区、パリ西部のセーヌ川周辺、サン=ジェルマン・デ・プレ地区、そしてマレ地区だ。
これらの地区は所得の多いフランス人も暮らす場所で、国内富裕層上位10%が集中している。
 

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パリ最新情報「ドル高ユーロ安、アメリカ人富裕層がパリの不動産市場に復活」

 
2021年度、フランス全体の不動産価格は上昇した。
フランス本土の中古アパルトマンの価格は前年比で+7.2%となり、地方では+9%になったところもある。
ところがパリ市内では-1.6%と、2020年よりわずかに回復したものの価格は下がったままだ。
それにドル高ユーロ安が加わったとなれば、パリの不動産はアメリカ人にとって非常に魅力的な投資対象ということになる。

またコロナ禍以降の内見システムも、契約をスムーズにさせている。
不動産契約に当たり、3Dによる内見やオンライン方式での書類提出がフランスでも可能になった。
そのためアメリカ人投資家・富裕層は即断即決のケースが多く、中には初見から契約完了までわずか半日であった事例もあるという。
ただ彼らの多くは合理的で購買基準が高く、古い物件を買うにしても、ホテル並みにリノベーションされたものやエアコン付きなど、現代の快適さを古都パリにも求める。
 



 
分譲・別荘目的だけでなく、賃貸用に開発するアメリカ人も多い。
これには2024年のパリ五輪が後押しとなっており、1週間単位で借りられる超高級フラットがパリ中心部に少しずつ現れ始めた。
一泊の平均価格は600〜800ユーロ(約82,000円〜10,9000円)だというが、それでも同じアメリカ人旅行客で予約は埋まっているそうだ。

このような現実を受け、仏紙Le Parisienは「アメリカの富裕層が復活。パリは彼らのための売り場だ」と報じた。
パリジャンの流出は今も止まらないが、その一方でアメリカ人投資家がパリへ向かっている。
続くユーロ安でパリの不動産事情が大きく変化した。(オ)
 

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