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パリ最新情報「フランスのテーブルウェアを彩る、美しい陶磁器」 Posted on 2022/01/09 Design Stories  

フランス料理がユネスコの文化遺産として登録されている理由の一つには、テーブルウェアの洗練度の高さが大きいとされている。
前菜、メイン、デザートとそれぞれの料理に合わせてお皿を変えるので、その素敵なデザインが会話の中心になることも多々ある。

現代人は忙しい生活リズムを送っているためワンプレートで済ますこともあるが、それでも日曜日、クリスマス、誕生日、結婚式などのハレの日は家族そろって食卓を囲み、フルコースを楽しむ食習慣は今も健在だ。

パリ最新情報「フランスのテーブルウェアを彩る、美しい陶磁器」

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そんなフランス料理と切っても切れない関係にあるのが、フランスの陶磁器。
パリの西郊外にはセーブル(Sèvres)という街があり、ここはフランスの約300年にも及ぶ陶磁器文化が最初に花開いた場所である。
初めて取り仕切ったのは、ルイ15世の側室であったポンパドゥール夫人。才色兼備でファッションリーダーでもあった彼女がフランスの芸術を繫栄させようと、ヴェルサイユ宮殿にも近いセーブルに窯を構えたのが始まりだった。
以来、ここで作られる陶磁器は「セーブル焼」と呼ばれ、ドイツのマイセンと並びヨーロッパの文化と美を伝える優れた陶器を生み出し続けている。

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当時はフランス中から選りすぐりのサヴォワ―ルフェール(匠)、絵付け師、化学者が集められたという。
今日に至っても生産量は年間約6000ピースと限定され、そのほとんどが外交の献上品など国のために作られる。
しかしこの少量生産は「最高の作品を作り出す」ための必然だそうで、その稀少性ゆえに、誇り高きセーブル焼の名声は一段と高まっている。

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セーブル焼の一番の特徴は、その美しい絵付けにある。
花、鳥、森、城などを多彩な色で描き出すセーブル焼は、もはや一級芸術品。
絵付け師は、数千種類に及ぶ絵具を駆使し、宮廷文化を飾ったオリジナルを復元するという。

陶磁器の世界ではブルー(瑠璃色)が最も表現することの難しい色の一つとされ、ブルーを持たないメーカーは一流のメーカーでないとまで言われる。
セーブル焼のブルーには3つあり、深い瑠璃のブルー、夜空の雲を表現したクラウディーブルー、明るくクリアな水色。
その色の鮮やかさ・深さが、セーブル焼が「王者のブルー」と言われる所以である。

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しかしそれだけに、値段はとても高価なもの。
19世紀にはセーブルから派遣された装飾師により、同じく陶磁器の街として有名だったフランス中部リモージュの焼き物が多様性を持つようになった。
印象派の画家、ルノワールはリモージュ出身で、13歳の頃から陶磁器の絵付け職人として高い才能を見出されたそうだ。

セーブル焼と違いこちらは一般に広く広がっているため、リモージュ焼の食器は現在でもパリのレストランでよく見かける。
蚤の市などで、気品あるアンティークのリモージュ焼を発見することもしばしば。

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このコロナ禍で見直した習慣のひとつに、食がある。
家で料理をする機会が増えたことで、調理器具を高品質・高機能に買い替える人はフランスでも増えた。あわせて、テーブルウエアへの注目も高まっており、シンプルながら明るい色使いの“映える”食器が人気だという。

フランス人なら誰もが知るセーブル焼だが、一つ一つが高価なため手に入れることはなかなかに難しい。しかし、この国の人々がフランス陶磁器を誇りに思っていることは確かだ。
フランスのテーブルウェアを参考にしながら、まずはおもてなし上手となってみたい。(聖)

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