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パリ最新情報「広がるパリの水くみ作戦。リサイクルより『使わない』という選択を」 Posted on 2022/03/28 Design Stories  

 
2022年、パリの春夏は例年より気温が高く、乾燥した気候になることが予測されている。
晴天に恵まれるのは嬉しいことだが、炎天下では一駅歩くのも危険だ。
ここ数年、真夏のパリは猛暑が続いており、日本と同じようにこまめな水分補給が必要となっている。

フランス家庭でペットボトル入りの水を買うのはごく普通のことである。
しかしウォーターサーバーがあまり浸透していないため、スーパーで1,5Lの水を6本パックで買い、せっせと家に運ばなくてはならない。
重いので大変なのと、何よりゴミが出てしまう。
そこでパリ市は、水道水への関心を高めるためもっと手軽で、さらに環境にもやさしい水分補給を広めようと積極的な活動を行っている。
 

パリ最新情報「広がるパリの水くみ作戦。リサイクルより『使わない』という選択を」



 
パリの水を管理するEau de Paris(オー・ド・パリ、パリ水道公社)は、パリ市内に41か所の水くみポイントを設置した。
これは2015年から始まった試みで、「ペットボトルのリサイクルは良いこと。でも使わないのはもっと良い!」をキャッチコピーとしている。

この活動は、パリ市民の2人に1人が外出時に水を買っていること、そして観光客の4分の3近くが滞在中にペットボトルを購入している、という観察から始まった。
そのため、2回に1回しかリサイクルされないプラスチック容器の代わりに、マイボトルの使用を一般化することを目的としている。

驚くのは、41か所に設置された水くみポイントのうち、9か所から炭酸水が出てくるということ。
フランス人は特に食事のときに炭酸水を好んで飲むのだが、こればっかりは水道から出てこない。
ということで、パリ市は水くみポイントに炭酸ガス注入装置も設置した。
 

パリ最新情報「広がるパリの水くみ作戦。リサイクルより『使わない』という選択を」

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パリ市の水道水は安全なのか?という疑問もある。
しかし結論から言うと、水道水は普通に飲んでも大丈夫だ。
フランスは適度な降雨量に恵まれていて、アルプスやピレネーなどの山脈があり自然も豊かで、水資源にも恵まれている。
ただ硬水なので、日本の軟水とは違って少し重たい風味が残る。

またパリ市は、普遍的な公共財であるこの水道水をより身近なものにするために、3月から「Ici, je choisis l’eau de Paris」(ここで、私はパリの水を選ぶ)作戦を開始した。
これまでは外だけの水くみポイントであったのが、今後はパリ市内の500か所のショップで水をくめることになった。

具体的には、Eau de Parisに賛同するパリのショップが無料で水を入れてくれるというサービスだ。
ショップの入り口にはEau de Parisの青いステッカーが貼られており、パリ市の公式ホームページでも地図を確認できる。
屋内外含めた各ポイントには、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムなどの含有基準値と、その場所でくめる水の含有量も併せて表示されている。

なお、すでにロンドンで実施された同じ作戦 “Refill London “では、100万本以上のペットボトルの購入を回避することができたとパリ市のサイトで紹介された。
 

パリ最新情報「広がるパリの水くみ作戦。リサイクルより『使わない』という選択を」



 
環境問題、熱中症対策にも活かせるパリ市の水くみ作戦。
生きていくために不可欠な水は、どの時代でも絶対に確保しなくてはならないし、すべての人に行き渡らなくてはならない。
今の小さな努力が、次世代の安全性・豊かさに繋がるだろう。(大)
 

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