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滞仏日記「夏至のパリで、ぼくはウフマヨ摘まんで、ワインと音楽祭!」 Posted on 2021/06/22 辻 仁成 作家 パリ

滞仏日記「夏至のパリで、ぼくはウフマヨ摘まんで、ワインと音楽祭!」

某月某日、今日は夏至なのだ。
つまり、今日から夏なのである。
長かったコロナのせいで、鈍りまくった精神をアップさせるために、ぼくは夕方、カフェを梯子した。
今日はフランス全土で音楽祭なので、朝まで音楽が溢れかえっている。朝までがんがん音楽を演奏しても、警察は来ない日、ということだ。国が認めているのだから。(しかも、今夜は夜間外出禁止令が解除されているのである)
息子は当然、ルーシーと深夜まで「帰らない宣言」をし、仕方がないからぼくは10ユーロ(1300円)をカンパしてやった。←ケチ? 笑。
ぼくは昼も夜も息子に食事を作る必要がなくなったので、(またかよ)、昼はカフェでババ・オ・ラムとカフェオレで済ませ、ちょっと仕事をしてから、夕方、中心部に繰り出した。
ふらふら市内を散歩し、感じのいいカフェバーに入り、ウフマヨと白ワインを頼んで、どこからともなく聞こえてくる路上ミュージシャンの演奏で身体を揺さぶった。

滞仏日記「夏至のパリで、ぼくはウフマヨ摘まんで、ワインと音楽祭!」



ウフマヨはアペリティフの時に、フランス人が結構注文する一品で、硬茹でのゆで卵にマヨネーズをかけただけのもの。笑。
最初は、うっそーーーーーん、と思ったけど、これが結構、はまる。
卵で出来たマヨネーズを卵にかけて食べるという発想が、マヨラーの父ちゃんには超やばい。
しかも、これがバカにできない。マヨネーズはゆで卵との相性抜群なのである。
ぼくがふらっと入ったカフェで出されたウフマヨはマヨネーズにカリカリパルメジャーノが突き刺さっていたので、ワインに、ばっちりだった。
美食の国、フランスだけど、実は市民はちっとも美食じゃなかったりする。笑。
でも、ぼくはこういうフランスの庶民的な味が好きだ。
音楽祭の日には、ちょうどいい。
ぼくは遠くから聞こえてくる誰かの演奏を聴きながら、1人で盛り上がった。←父ちゃん、寂しいのか? かわいそうにねー。

滞仏日記「夏至のパリで、ぼくはウフマヨ摘まんで、ワインと音楽祭!」



とにかく、今日は音楽祭の日だ。
プロじゃなくても、国中が音楽好きに解放される日で、去年はコロナで大変だったので、今年はなんか奇妙な盛り上がり方を示している。
まだ、コロナ禍を引きずっているからだろう、通りで演奏する人は少ないから、家の窓をあけて、みんなガンガン音楽をかけて、家族パーティ? 友だちとパーティ? やっている。
息子も音楽仲間たちとどこかでライブをやっているのかもしれない。←若いのだから、それでいいのだ。←出かける前に、明日から一週間は必死で勉強するから許して、と言ったので、許してやった。←ただ、29日がバカロレアの全国試験なので、そこで成績下がったら、許さないよー、と脅しといた。←えへへ。当然だろうが!



ぼくが渡仏したばかりの20年前はもう大変だった。
その当時、ぼくは左岸、6区のオデオン駅前に居を構えていたので、そこは人で溢れかえり、交差点のそこかしこでバンドが大音響で演奏をするわ、みんなで大合唱するわ、超凄かった。
ま、日本のホコ天のような感じが全土で繰り広げられている絵を想像してほしい。
しかも、朝まで・・・。
音楽祭の日は誰も文句を言わない、一晩中音楽やっていいというので、オデオンとかだと、朝までヘビメタバンドが演奏していたり、マジで、あれにはびっくりした。
「めちゃくちゃ楽しいじゃん、フランス」と思った、ぼくの最初の記憶となった。



これは1982年に始まったのだけど、当時の文化大臣、ジャック・ラングが考案し、2011年には世界的な広がりをみせ、日本でも、たしか京都だったかな、でやっている。
今年もコロナの影響でかなり規制が強いけれど、それでも、あちこちから音楽が聞こえてくる。
ちなみに、今、聞こえているのは、ジプシーキング!!!!! 
セーヌ川クルーズライブをやった我らのメンバーもあちこちで演奏をしているようだ。
あの日、船の上で音響を担当したニコは、フランス2チャンネルの生番組、なんと、ローランギャロスのスタジアムでフランス中のミュージシャンを集めたイベントの仕事をしているみたいで、わざわざぼくに、セッティングの写真を送ってくれた。本番直前の様子と、オンエアーの映像。←おお、こんなすごいエンジニアだったんだね。

滞仏日記「夏至のパリで、ぼくはウフマヨ摘まんで、ワインと音楽祭!」

※これがリハーサルの時の風景

地球カレッジ

滞仏日記「夏至のパリで、ぼくはウフマヨ摘まんで、ワインと音楽祭!」

※これが本番、オンエアーの映像。ニコ、すごいねー。



ぼくの知り合いのストリートミュージシャンたちは「規制で今年は座ってやらないとならないから」とライブを断念した連中もいる。
なんとマクロン大統領は首相官邸に屋外会場を作って、人気DJたちを集めて今の若者へ向けたコンサートを開催した。
見に行ったのだけど、警察がいっぱい出ていて、近づけなかった。くすん。
でも、首相官邸でもDJが演奏をするフランス、なかなか、面白い国だよね。←来年はきっとぼくもやるよー。щ(゚Д゚щ)カモーン

しかし、今夜は朝まで騒げるとなったことで、感染が再び増えなければいいのだけど、ぼくはそのことが心配だし、若者たちは、もはや、何もなかったかのように騒いでいる、うちの息子も、きっと・・・

滞仏日記「夏至のパリで、ぼくはウフマヨ摘まんで、ワインと音楽祭!」

※こちらが首相官邸で行われた政府主催のDJライブ。客が全員座ってるところがねー。笑。



ところで、ここで、お知らせが。セーヌ川クルーズライブの視聴期間が終わったので、見逃したので見たいという人や、どこかでDVD出さないのか、という人が結構いて、(嬉しい)今、まず、東京のエンジニアさんが、デジタル・マスタリングをやっている。
ニコが調整した素晴らしい音源をさらに完璧にさせることに成功をした。まるでバンド前にいるような完璧な音源になりそうだ!!!
個人的な目的でこの作業をやっていたのだけど、出来栄えがいいので、なんらかの形で発表できないか、と仲間たちで計画している。
ビデオ発売とかは難しそうなので、どうするかね・・・。
ともかく、ぼくは音楽が好きだ。夏とか秋に、またライブが出来ないか、いろいろと計画しているので、吉報を待て!!!! 音楽は終わらない。ぼくが終わっても・・・。笑。

つづく。

滞仏日記「夏至のパリで、ぼくはウフマヨ摘まんで、ワインと音楽祭!」

※マレックはいま、スペインで飲んでるらしい。

自分流×帝京大学