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滞日日記「ライブを翌日に控えて大変なことが!神経質過ぎる父ちゃんの怯え」 Posted on 2022/08/12 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、東京に戻ってから、ホテル内で息子たちと食事をした以外は誰ともあわずに、過ごしてきた。
毎日、アンティジェニックのコロナ検査をしているけれど、ずっと「陰性」。体温も35度8分といつもの体温をキープ。(体温、一番、低い時は35度5分くらい。えへへ、冷血動物なのであーる)
よし、調子がいいので、明日は、最高のライブが出来そうであーる。
でも、だからこそ、ベストを尽くしたいので、大阪ライブの後も打ち上げはなし。
横浜は、大阪の経験を踏まえて、更に、レベルアップしたライブになるはず、であーる。
メンバーも素晴らしい。ゲストもすごい奴が参加する。
明日を思うと、ちょっとワクワクするのだ。今日はそういう日であった。
ところが、であーーーる。
一世一代の横浜ビルボードライブを前に、大変なこと起きたのだった。

滞日日記「ライブを翌日に控えて大変なことが!神経質過ぎる父ちゃんの怯え」



ごほごほ、と分厚い壁の向こうから咳の音が・・・。えええ!
これがめっちゃ気になって、仕事をしていた父ちゃん、手をとめて、壁を睨みつけた。
壁はかなり分厚く、ノックしても、重い音しかしない。
さすがにコロナもこの分厚い壁は通過できまい、と思った、父ちゃん。
咳は夕方前から聞こえてきたので、チェックインした新しいお客様なのだろう、と想像をした。午前中には咳音はしなかった。
・・・さて、どうしよう。
感染者さんなら、その方のことも心配だけど、明日にコンサートを控えた父ちゃん、自身のことがもっと心配・・・。
しかし、いくら感染力の強いBA5であろうと、このホテルの壁を突破はできまい。
そうか、杞憂だな、と思ったが、う、しかし、この分厚い壁越しに聞こえるくらいの咳なのだから、・・・。
隔離ホテルじゃないのに、大丈夫なんだろうか? 
咳は空咳なので、音の感じからするとコロナの可能性が高い気がする・・・。(個人の意見です)
あの咳だと、外出せず、ここで落ち着くまで自主隔離をするつもりかもしれない。
と、その時、ぼくは換気ダクトに目が、留まった。
天井に空調のダクトがある。マジか・・・。
そういえば、昔、コロナが出現した時(2020年)、中国でダクト越しに感染者が出たというニュースもあった。(さすがに今は聞かないが、わからない部分もある)
慌てて、FFP2マスクをした、父ちゃん。
神経質なので、父ちゃん、青ざめてしまった。
耳をすませたが、咳は聞こえない。ただ、咽ただけかもしれないじゃないか。
しかし、このコロナ禍の3年間、日本でのライブのために頑張ってきた父ちゃん、がこんなことで、人生に負けるわけにはいかないのであーる。あーる。
ぼくはコンシェルジュに電話をし、ここまでの経緯を、失礼にならないように、決めつけることもなく、淡々と、説明してみた。
「つまり、このダクトがこのフロア全体と繋がっているかどうか、知りたいんです」
「かしこまりました」
コンシェルジュさんは優しい方であった。
ごほ、ごほ、と咳の音がした。
父ちゃんは明日のライブのことを考え、息が出来なくなった。(知り合いの医者が言っていた。そういう時はあまり深く呼吸をするな、と・・・。そんなの無理だよ)
そこにコンシェルジュさんから電話がかかった。
「辻様、調べました。当ホテルの空調は一つ一つが独立したものでして、空調を通してウイルスが侵入できないような構造になっております」
「おおお!」
父ちゃんはほっと胸をなでおろしたのだった。
「じゃあ、安心ですね」
「しかし、辻様、ドアの下が若干隙間がございますので、万全かと言われれば、なんともわかりません。ご不安を抱えて過ごされるのは申し訳ありませんし、コンサートも控えているということですので、・・・ご提案なのですが、大変、ご足労をおかけいたしますが、他のフロアへのご移動はどうでしょうか?」
ぼくは考えた。隣の人がコロナかどうかもわからない。咳はつい、先ほど、始まったのである。しかし、ライブを明日に控え、疑えるものは疑わないとならない。
ホテル側のご厚意もある。
ごほ、ごほ。
ああ、移動しよう!

滞日日記「ライブを翌日に控えて大変なことが!神経質過ぎる父ちゃんの怯え」



ぼくのわがままで申し訳ないのですが、もしもの場合を考慮して、お部屋を替えてください、とコンシェルジュさんにお願いをすることになった
「もちろんでございます。ベルボーイがお荷物をすべて移動しますので、辻様は、辻様のペースで荷物をまとめられたら、こちらまでご連絡ください」
実に丁寧な対応であった。いい人だ。日本のホテル、さすが、であーる。
父ちゃんがここでコロナにかかるわけにはいかない。
3年も頑張って、禁欲生活ならぬ、禁コロ生活を続けてきたのも、すべて、日本でのライブのためだった。
ベッドの端っこに座り、息を潜めて、ベルボーイさんを待った。
ごほ、ごほ、と、忘れた頃に聞こえてくる。
それが、コロナじゃなく、風邪であっても、ぼくはひくわけにはいかない。
コロナ禍でなければ、コンサートを明日に控えていなければ、部屋を移動することはなかっただろう。
でも、こればっかりはわからない。神経質な父ちゃん、ここは自分の判断が正しかったと信じたい。
ドアを小さくノックする音がした。ベルボーイさんが来た。チャイムを鳴らさないのは、お隣への配慮だろう。素晴らしい。
出ると、真面目そうなベルボーイさんが、恐縮気味に、すいません、お手数をおかけします、と言った。
いいえ、コロナかどうか、誰にも分りませんし、何とも言えないので、こちらこそ、本当に、すいません。
と謝った父ちゃんであった。

滞日日記「ライブを翌日に控えて大変なことが!神経質過ぎる父ちゃんの怯え」



※ 大阪ビルボードでの、ワンシーン!!!
動画で、どうぞ!!!!!!

ギター、トランク、パソコンバッグなどを積んで、ベルボーイさんと一緒にフロア移動をした、父ちゃん。
その時、ルームサービスの人がワゴンを押しながら、お隣の部屋へ、・・・。
そうか、部屋から出られないものなぁ・・・。ホテル側にも一応、お伝えしているし、ここは、ホテルの判断に任せるしかない・・・。いろいろと心配だ。
「ルームサービスでございます」
ぼくはドアが開く前に、そこを離れた。
ともかく、今は、静かな部屋で、この日記を書いている。
ホテル業界もコロナで大変だ。コロナのせいで、飲食、旅行、ビジネス、学校、すべてが大変になった。弱毒化しているのは事実だし、来年には、もうちょっと落ち着いていてほしいものである。

滞日日記「ライブを翌日に控えて大変なことが!神経質過ぎる父ちゃんの怯え」



とにかく、空咳の音を聞きながら、気を揉んで、夜を過ごすより、早い決断で、安心な夜を手に入れられたのは、幸いであった。良かった、と言えるのだろうか・・(ライブにお越しの皆さん、ビルボードの感染対策に従って、マスクをして、ライブをご覧くださいね)
ともかく、こうやって、父ちゃんは父ちゃん自身を守ってきたのであーる。
明日もコロナテストをして、挑みます。

つづく。

今日も読んでくれてありがとう。
いやぁ、こんなに神経をつかっていると、ちょっと疲れますが、でも、明日(すでに、今日)のライブは最高になるでしょう、えへへ・・がんばりまーす。

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