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滞仏日記「ベルトランと義和が肩組んだ。ついにゲネプロが終わり、いよいよ次は本番じゃあ~」 Posted on 2023/05/27 辻 仁成 作家 パリ

滞仏日記「ベルトランと義和が肩組んだ。ついにゲネプロが終わり、いよいよ次は本番じゃあ~」

某月某日、さんちゃんがいない。
起きたら、さんちゃんがいない、で一日がはじまる最近の孤独な父ちゃん・・・。
そこにジュリアから、三四郎が幸せそうに他の犬たちと野原を駆け巡る写真が届くのだったぁ~。
眺めて、ひゃあ、必要とされていない自分に、しゅん~。
でも、今は、めげてはいられなーい。ついに、今日、ゲネプロなのである。
ゲネプロ、つまり、最後の通し稽古のことだ。
泣いても笑っても、これが最後のリハーサル。
父ちゃん史、最高の日を目指して!!! 
日本に行っていたプロモーターのベルトランもやって来た。音響エンジニアのデビッドやカオリーナなどもやってきた。
オランピア劇場ライブ製作チームが全員揃ったのだった。
しかし、待て、それだけじゃなかった。
そこに、な、なんと、NHK「パリごはん」の義和”ちくわぶ”ディレクターが自撮り棒にカメラを装着して出現!
なぜ「ちくわぶ」かと言えば、前にもここで書いたが、二人で西麻布におでんを食べに行ったら、自分だけさっさとちくわぶを注文し、何も語らず、齧りやがったからである。
ちくわぶに突進するその無心な姿に、えらく、感動した父ちゃんはその日より、「ちくわぶくん」と呼んでいる。
ちょっとだけ胡散臭いベルトランとちょっとだけちくわーぶな義和ディレクターが今、この瞬間、同じスタジオ内にいるという点と点が繋がり、この日記がついに一万キロを超えて、線になった、瞬間、読者の皆さんにはわかって貰えると思うのだけれど、父ちゃんは一人スタジオの中心でガッツポーズ、そして、愛を叫んだ~、
あいらぶゆ~!

滞仏日記「ベルトランと義和が肩組んだ。ついにゲネプロが終わり、いよいよ次は本番じゃあ~」



ということで、最後の通し稽古は一言、「素晴らしい出来栄え」となった。
手首を怪我したジョルジュだけれど、いつのまにか、包帯も半分になっており(手首だけサポーター風のギブス)、おお、完全復活の見通し。
トランペットのユンとヴァイオリンのマリオの意思疎通が今一つだけれど、韓国対イタリアのパワーバランスを超えたガチの対決を父ちゃんは期待している。
ユン君はまじめで、マリオはお調子者だから、間にいる父ちゃんが大変かな。
ユン君は育ちのいいちょっとトッつあん坊や風で、野生児マリオとは対照的。
マリオが唯一のソリストだったのに、そこに、もう一人ソリストがやって来たので、ちょっと様子見中・・・。
さて、マリオのお父さんとお母さんがシチリアからやってくる。
マリオは39歳、お父さんは84歳だ。
マリオはアルジェリア生まれだが、お子さんのいなかったお父さん、サルバトーレと、お母さん、ジョバンナが養子縁組をして、彼を育てることになった。
「アドプテ」という仕組みがあり、フランスはとっても多い。白人の親だけどお子さんがアフリカ系など、さまざまなのである。
マリオにとって、大好きなお父さん、お母さんなのだ。彼をアメリカの名門、ジュリアード音楽院まで、登らせたのは、ご両親の努力のたまものと、思うと涙が出る。
冗談ばっかり言って、真面目にやらないマリオだけれど、(ポーランドには自分のクラシックの楽団を持っている)そのご両親がやってくるのだ、ぼくはもう少し見せ場を作ってやらないとならない。
でも、ユンも一万キロを超えてやってきて、パリを歩いて、世界が変わった、というので、応援したい。ユン、遠慮するな、とジョルジュが今日、はっぱをかけた。
「ユン、もっともっと力強くやれ、誰にも遠慮するな」
ジョルジュは愛があるね。
この国は、遠慮したものは誰もすくっちゃくれないのである。
覚えておくがいい、ユン君!

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ピアニストのエリックはお母さんが日本人、みちこさんだ。お父さんは、ロジェさんだ。この二人に間違いなく愛情を注がれて生きてきた。
この人が怒ったところを見たことがない。小学生、中学生時代は日本で育った。彼は日本とフランスの二つの国籍を持っている。
どっちなの、と聞くと、もじもじしながら、いや、あの、日本大好きです、とつぶやく。顔は西洋人なのだ。でも、心は日本なのだな、と思うことがよくある。
「辻さん、今日、ぼくは何もないから、何かやれることがあれば手伝います」
こういう気配りが出来る人なのである。
ベースのケンタロウは日本人だけど、やんちゃなマリオが「ホセ」とあだ名をして、みんなに、メキシコ人だと思われている。
でも、実は、下町生まれ、ちゃきちゃきの江戸っ子なのだ。
まだ、彼とは3回目のライブなので、素性はよくわからない。
でも、一番、練習をしているし、ぼくのライブのビデオを全部見て、比較検討するくらい緻密な男なのである。
おっと、忘れていた。
爆笑問題の太田光氏に、くりそつな、我がバンドのローディ、マコちゃんは、そんなぼくらを繋ぐムードメーカーで、常に明後日の方角を眺めていて、自分の中で、世界を築き完結している、不思議な人・・・。
時々、ジョルジュが、そんなマコを笑っている。
「どうなってんのあいつ?」
言われて、ぼくは肩を竦める。
でも、マコがいるからこそ、このバンドは存在出来ているのだ。
「辻さん、これ、昨日、ジョルジュに貰っちゃいました。お前にやるよって」
覗いたら、腕にかっこいいロックのブレスレットをつけていた。貰ったの?
「おれ、なんにも貰ってないのに。なんでマコちゃんだけ」
「さぁ、あはは」
マコが、昨日の食事のあと、ジャパニーズソウルマンTシャツに全員のサインをもらっていた。ぼくの宝物という顔をしていた。
「マコちゃん、なんで、太田光にそっくりなの?」
「え、そうですかね」
「そうですかね、って、なんで、太田光の物まねやるの?」
「ええ、してないですよ」
「してるじゃん」
「これ、普通なんですよ」
「それ、普通なの? 言われたことない? 太田光に似てるねって」
「みんなに言われます」
そのあと、げへへ、と人を馬鹿にするような顔で笑ったのをすかさず、カメラで激写した父ちゃんなのであった。似てる!!!
最高のライブにしよう!
熱血~!!!!

滞仏日記「ベルトランと義和が肩組んだ。ついにゲネプロが終わり、いよいよ次は本番じゃあ~」



人生はまだつづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
朗報が先ほど届きました。このオランピア劇場ライブのあとのライブをベルトランが「ぜひ一緒にやらせてくれ」と言い出したのです。今までちゃんと音楽を聴いてなかったくせに、ゲネプロに感動した~、のだとか。イケる、とうちのマネージャーに耳打ちして帰ったそうです。あはは。やれやれ・・・笑。それから、大阪の中原しゃんから連絡があり、東京も決めたようです。いい会場ですね。明日か、明後日に、もう少し詳しいことを話せると思うのですが、東名阪のミニツアーになりそうなので、そこのところ、よろしくお願いします。地球カレッジの情報は、下のバナーをクリックね。

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