PANORAMA STORIES

三四郎日記「吾輩は犬である。天敵現れ、ビビりまくる!」 Posted on 2023/04/12 三四郎 天使 パリ

某月某日、吾輩は犬である。
ここには、恐ろしいやつがいる。
お風呂とムッシュの部屋のあいだにいるのだ。
いつも忘れていた頃、不意に出現するのである。
気を抜いていると、遠くから、じいっと、こっちを見ていたりする。
あいつだ、と思いぼくは警戒する。
暫くにらみ合うが、向こうもこっちを警戒して、様子を見ている。
「うううう」
とぼくは唸った。
威嚇するために、唸り声を発し続けていると、
「それはお前だから」
とムッシュが少し離れたところから、面妖なことを言いだす。
どういうことだ?
ムッシュはキッチンで料理をしている。
いい匂いがする。また何か美味しいものをつくっている。
でも、ぼくは動くことが出来ない。そこに、あいつがいるからだ。
ちょっと、近づいて、威嚇しようとすると、あいつも近づいてきたじゃないか。
おおお、ビビったぁ。
ぼくはキッチンのムッシュの足元へといったん逃げることにした。
「三四郎、だから、それはお前だっての」
ぼく?

三四郎日記「吾輩は犬である。天敵現れ、ビビりまくる!」



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「あれは鏡だよ。鏡に映った自分じゃないか。ほら、教えてやる」
そういうとムッシュはぼくの腹部を掴んでもちあげ、こともあろうに、あいつの前へとぼくを連行したのだった。
うわああああ、目の前に、あいつが! それもでかい!!!
「よく見て見ろ。ぼくもいるだろ。お前の後ろに」
そいつのうしろにムッシュに似た人がいるが、それの意味が分からないので、怖い。
なんで、ムッシュはぼくを黒い変な犬と一緒にするのだろう。
なんで、そいつの後ろにムッシュのような人がいるのかも、意味がわからない。
どうなってるんだ!
「わかったろ、三四郎。これは鏡というもので、こっちを映しているんだよ。お前、わかったの? もう成犬なんだから、わかりなさいよ、そろそろ」
ぼくが、そいつに向かって、ううう、と強く唸ると、ムッシュが付けたした。
「お前、バカか? もしかして」
そいつもぼくを威嚇していた。
ぼくは後ずさりし、ムッシュの足元に隠れた。
そいつも、そっちにいるムッシュのような人の足元に隠れてこっちを見ている。
「まあ、いいよ。じゃあ、慣れるまで、そうやって、ずっと唸っていればいい」
まもなく、ムッシュが何かごはんを食べ始めたので、ぼくはおこぼれを授かろうと、そいつの前を離れ、ムッシュの足元へと行った。

三四郎日記「吾輩は犬である。天敵現れ、ビビりまくる!」



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夜になると、お風呂場の上に、そいつが出現をする。
暗いお風呂場の上から、ぼくを見下ろすのである。
ううう、とぼくは警戒をする。
「だから、それもお前だっつの」
ぼくが唸り声を発すると、ムッシュがぼくを抱きかかえ、風呂場へと連れて行った。
「この窓に反射しているだけだよ。窓。あっちは鏡。一緒なんだ。映しているんだよ、世界を。ほら、これはお前だろ。わかるかい?」
ううう。わからない、ムッシュ、あなたは何を言ってるのか。
怖い、あいつ、ぼくを睨んでる。
「反射しているだけだから、大丈夫だよ。はんしゃ。そろそろ、慣れてくれないと、疲れるんだけれど」
ムッシュが何を言っているのか、やっぱりぼくにはわからない。はんしゃってなんだ?
ムッシュは呆れて、お風呂に入った。
ぼくは廊下から、風呂場の天井あたりにいる黒い犬に威嚇を続ける。
でも、何も進展はなく、だいたい疲れて、ぼくは自分のベッドに潜り込み、寝てしまい、するとそいつも視界から消えて、なんとなくうやむやになるのだった。
お風呂からムッシュがあがると、ガウンを着て、ぼくのところにやってくる。
ぼくを抱きかかえ、ソファに連れて行く。
ムッシュのぽかぽかするお膝の上で丸くなる。
油断はできないが、ムッシュの傍にいると安心なのだ。次第に、どうでもよくなっていく。
あいつがぼくの視界に出現するまで、ぼくは眠ることにする。
おやすみなさい。

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つづく。

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Posted by 三四郎

三四郎

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2021年9月24日生まれ。ミニチュアダックスフント♂。ど田舎からパリの辻家にやってきた。趣味はボール遊び。車に乗るのがちょっと苦手。