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三四郎日記「吾輩は犬である。吾輩にも苦手なものがある」 Posted on 2023/04/06 三四郎 天使 パリ

某月某日、吾輩は犬である。実は、吾輩にも苦手なものがあるのだ。
苦手というよりも、恐ろしい生き物、と言った方がいいだろう。
それは、「猫」と呼ばれる動物である。
吾輩は「犬の園」で生まれた。なので、犬のことはよく知っている。
ムッシュの家にひきとられてから、ジュリアというドッグトレーナーのところにたまに預けられるが、そこの犬たちとも、なんとか仲良くやってきた。
もちろん、いじわるな犬もいるし、とくに大きくて粗野な犬は苦手かもしれない。
ぼくは小さいから、でかいのに突進されると、きゃいーん、となってしまう。
大きな犬の後ろにくっついてジュリアの家では息を潜めて過ごしたけれども、その粗野な犬たちとて、恐ろしい、ということはない。
しかし、「猫」は違う。
異次元なのである。

三四郎日記「吾輩は犬である。吾輩にも苦手なものがある」



ムッシュが海の近くの家に引っ越したので、ぼくもパリを離れ、ムッシュとノルマンディの海沿いで暮らすようになった。
そこはとっても静かな場所で、排気ガスというものもなく、ちゃんと土があるし、海もあるし、空は広いので、のどかに暮らすことが出来ている。
ところが、ある日、ぼくの前に、「猫」が出現した。
明らかに、犬ではない別の生き物なのだ。ぼくはびっくりした。
ムッシュが、「三四郎、あれは猫だよ」と教えてくれたのだけど、田舎にごろごろ、そこら中にいるのである。
ムッシュ曰く、パリでは家の中で飼われているらしい。
だから、会わなかったが、田舎は、放し飼いなのだ。ノルマンディには、首輪をつけない「猫」がうろうろしている。
その日、ぼくの目の前に出現した黒い猫は、明らかにぼくよりも強そうだった。
かもめとか鳩ならば、勝つ自信があった。
しかし、猫は別格なのである。
何せ、猫は、前脚をゆっくりと移動させ、頭を低くし、いかにも俊敏な姿勢で、こちらを睨むというか、見ているのである。
その視線が、そもそも異次元から繰り出される波動砲なのである。
ぼくなんか足は短いし、胴が長いので、俊敏さは微塵もない。なので、よくわかる。
あれは、飛びかかる態勢なのだ。
敵か味方かまずわからないのも、恐ろしかった。
目が茶色で、中心に黒水晶が、そこがすでに怖かった。
ぼくの目などは全部つぶらな黒目だが、この黒猫の目から、深い宇宙を覗くような畏怖を感じるのだ!
それだけで、ぼくなんかが逆立ちをしても敵う相手ではないのが、理解出来た。
その猫が、前脚をそろりそろりと出して、臨戦態勢で近づいて来るので、ぼくは、思わずビビってしまい、ムッシュの後ろに飛びのいたのである。
「おい、どうした、三四郎。あれは猫ちゃんだよ。かわいいいじゃないか。仲良くなってごらん」
「ブルブルブルブルブル~」
仲良くなれるわけがない。

三四郎日記「吾輩は犬である。吾輩にも苦手なものがある」



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そもそも猫語がわかないし、いわば、宇宙人のような存在なのに、ムッシュ、どうやってぼくはこの猫という生き物と仲良くやれるのか?
犬であれば、近づいて、お尻の匂いを嗅いで、だいたいの犬格を感知することが出来るが、猫という生き物は臨戦態勢なので、そもそもお尻など嗅ぐことが出来なーい。
たまに、吠える犬がいるけれど、あれは怖くはない。犬の習性だから、吠える者もいることをぼくはよく心得ている。
でも、猫は吠えず、にゃああ、と唸る。ひゃあああ、、、、にゃあああああだってよ!
しかも、腰の撓り具合、前脚の出し方でその強さもわかるのである。
ジャンプして飛びかかろうとしているのだ、このソーセージ犬のぼくに!!!
後ろ脚の筋肉を見たか! 
あんなので飛びかかられたら、短足のぼくなんて、一瞬で壊滅である。

三四郎日記「吾輩は犬である。吾輩にも苦手なものがある」



そこで、ぼくは一目散に逃げようとしたのだけど、ムッシュは、リードを引っ張って、
「大丈夫、ぼくはね、猫も大好きなんだよ。猫アレルギーだから触ることは出来ないけど、昔から猫にも好かれて、若い頃、死にかけたことがあるんだ。呼吸できなくなるんだよ。アレルギー検査をやったら、猫アレルギーと診断されて・・・。でも、見てごらん、可愛いじゃないか。マーシャルのところにいる子も黒猫だったね。三四郎、あいだを取り持つから、仲良くしてごらん」
「ブルブルブルブル~」
とんでもない。ムッシュはぼくを抱きかかえて、猫の方へと近づけようとしたので、ぼくはムッシュの腕の中で暴れた。すると、猫がジャンプをした。
ひゃああああ、、、、
見たか、あのジャンプ力、尋常じゃないぞ。
一瞬で、ベンチに飛び乗り、そこで再びシャープな攻撃的態勢をとったのである。
か、敵わない。
ムッシュ、ぼくは無理だ~、と叫びながら、一目散で家の方へと引き返した
リードを強くひっぱった。全力で引っ張ったから、やっとムッシュも理解してくれたのだ。ぼくが怖がっているということを!!!
今も、ぼくは震えている。
夢に出てきそうだぁ~。
吾輩がどんなに頑張ってもぜったいに勝てない相手、それが猫なのであった。

つづきます!!!

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Posted by 三四郎

三四郎

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2021年9月24日生まれ。ミニチュアダックスフント♂。ど田舎からパリの辻家にやってきた。趣味はボール遊び。車に乗るのがちょっと苦手。