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子育て日仏トイレトレーニングの違い。 Posted on 2024/05/05 尾崎 景都 日本語教師 パリ

 
親になったら避けられない試練、一瞬のことなのにやたらストレスがかかる試練、それが子供のトイレトレーニング。つまり、オムツを外すトレーニングだ。およそ1歳半~幼稚園入園の間で、日中パンツで過ごせるようになることを目標にする。
トイレトレーニングは、歩行や衣服の着脱の成長など開始のタイミングがあり、トレーニング中は「1日に何度かトイレへ誘う」「失敗しても叱らない」「無理強いはしない」など推奨されている進め方がある。この辺は日本とフランスで大きな違いはない。面白いのはトレーニング中の子供との向き合い方で、日本とフランスで驚くべき違いがある。
 

子育て日仏トイレトレーニングの違い。



 
思い起こせば4年前、我が家の長女は当時2歳、私は次女を妊娠中。
時はコロナ禍真っ只中、街中全てがロックダウン。
この大変な状況で、でも家にいるしかないならトイレトレーニングにはうってつけのタイミング? とポジティブに考え、かかりつけの小児科医やフランスの育児サイトを参考にとりあえず始めてみた。
みんな大体言うことは同じなのだ。
「もう赤ちゃんじゃないから大人と同じようにトイレに行かせるんだよ」
と、子供に言い聞かせるのが一番大事ということだった。
大人の真似をしやすいよう、トイレの近くにポット(おまる)を置くと良いということ。
必要なのはこれくらいで、トイレにはちょこちょこ誘いつつ、あとは子供の成長に任せるというシンプルなものだった。
しかしこれが上手くいかない。
懇切丁寧に説明しても、娘は分かっているのかいないのか微妙な表情。
何度も床を汚され、重いお腹で掃除と消毒を繰り返す日々にイライラが募る。
こんなに出来ないものなの? 何か間違ってる? 
不安と焦燥感で、床を拭く手に力がこもる。
失敗しても叱ってはダメ、と頭では分かっていても、つい「なんで、同じ失敗をするの」と声を荒げそうになる。
そこで、ふと、日本のサイトでトイレトレーニングを検索してみた。
するとフランスとはまるで違う。
トイレへ行くのが楽しくなるように壁を飾り、思わず子供が座りたくなるような可愛い便器を準備して、用を足せたらご褒美のシールを貼ってモチベーションアップ。
抵抗感も恐怖感もない環境づくりを、最大限子供の立場になって考えている、ではないか!!!!!! おお。
つまり、基本的な考え方が真逆で、「大人が子供の目線になって考える」日本と、「子供を大人の目線へ引き上げる」フランス、となっているのだった。
勉強になります。
 

子育て日仏トイレトレーニングの違い。



 
幼稚園へ入ってもトイレ戦争は続く。
娘は新学期までに何とかできるようになっていたものの、完璧とは言えなかった。幼稚園ではオムツ禁止で、私は娘のリュックに毎日山ほど着替えを詰め込んだ。
でも失敗が続くと、私は幼稚園から注意されるようになった。
フランスでは以前、オムツが外れていないと幼稚園側が登園を拒否しても良いという時代があったそうだ。
幼稚園が義務教育となった今、幼稚園は拒否する権利がない。
とは言え、「家でちゃんとやっていますか?」「次のバカンスまでに絶対に仕上げてきてください」と繰り返し言われ、ついにはベテラン先生が娘の肩をつかんで「私はもうあなたのパンツを替えたくないの」とキッパリ。
追い詰められる私。
そしてまた、日本のサイトを覗いて……びっくり。
日本では幼稚園でトイレトレーニングもしてくれるのだとか・・・す、すごい。羨ましい。
幼稚園の先生に「トイレトレーニングはこちらでやりますからお任せ下さい!」と言ってもらえました、というママたちの体験談を読んで、泣くほど羨ましかったのを覚えている。
 



子育て日仏トイレトレーニングの違い。

 
あの頃はゴールの見えない道を延々歩かされているような気分だったけれど、過ぎてみれば全てが笑い話。
むしろあれがきっかけで、「子供に説明しても分からない」ではなく、「説明して分かってもらおう」という風に自身も変わることができたのは良いことであった。
日仏、お母さんたち、がんばれ~。
 

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Posted by 尾崎 景都

尾崎 景都

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Keito Ozaki
パリ第7大学 言語音声学科 修士課程修了後、日本語教師として活動中。夫は料理人。