PANORAMA STORIES

三四郎日記「吾輩は犬である。そして、天使でもある」 Posted on 2022/02/16 三四郎 天使 パリ

某月某日、吾輩は犬である。雨は嫌いだけれど、雨の日は遊んでもらえるからうれしい。
土砂降りの雨なので、海には行けず、ずっとムッシュと家の中で遊んだ。
でも、外だと歩かないとならないし、「ポッポ(うんち)とかピッピ(おしっこ)をしなさい」とムッシュがうるさいのが、ちょっとね・・・。
外で他の犬たちのように用を足しくない。
家で、シートの上でピッピが出来るのだから、いいじゃないか、と思うのだけど、でも、ムッシュはぼくが犬らしくないことがちょっと心配なようで、
「なんで、外でやらないんだ、三四郎」
と小言ばかりいう。
雨だと外出しないで済むし、デロンギの前にふわふわのベッドがあるから、そこは実に温かくて居心地がよくて、ごろごろできるから最高なんだ。
それに、雨だと運動不足を心配して、ムッシュが全精力を注ぎこんで遊んでくれるから、ぼくはそっちの方が圧倒的にうれしい。
今日は一日中、小さなテニスボールで遊んだ。
ムッシュがボールを遠くのバスルームの方へと投げた。
ぼくは全速力で追いかける。ボールを捕まえ、口でくわえてムッシュのところに持っていく、と、
「サンシー、よし、よしよし、ブラボー。すごいな」
と褒めてくれる。
狩猟犬でもあるぼくの血が騒ぐ。褒められるのは大好きだ。

三四郎日記「吾輩は犬である。そして、天使でもある」



ボール遊びに疲れたら、ぼくはマットで昼寝をする。
一日、17時間は寝ていいことになっているので、疲れたら、ベッドで自由に眠っている。
ムッシュがぼくの横で今日はギターを奏でてくれた。
「マイファニーバレンタインという曲なんだ。いいだろ」
ムッシュはずっと語りかけてくれる。
「ジャズというジャンルのギターだから、ちょっと難しいんだ。わかるかな、ほら、このコード、ちょっとかっこいいだろ? 」
うるさいけれど、でも、語りかけられるのはうれしい。
ムッシュがギターを弾きながら歌いだしたので、その声とギターの音色が、優しくて、心地よかった。ぼくは騒音は嫌いだけれど、このタイプの音楽は好きだ。
「三四郎、君は天使のことを知っているかな」
ギターをやめて、不意にムッシュがぼくに向かってそんなことを言い出した。
「オスでもなくて、メスでもなくて、人間でもなくて、犬でもなくて、神様でもなくて、でも、5感を超えた不思議な力で通じ合える君みたいな存在のことをぼくは天使と呼んでいる。人間にもいるし、動物にもいる」
ぼくはちょっと見抜かれたかな、と思ったけど、理解出来てないふりをした。
いつか、ムッシュはぼくの特別な能力について、気づいてくれるはずだ、と思っていたけど、ありゃ、わかっていたんだ、とうれしくなった。
でも、ぼくはムッシュが現れるちょっと前から、ムッシュが来ることを予知していたし、実際、現れた時、来たな、と思った。
ムッシュも実はそういう力がある人で、だから、ぼくらは言葉なんてものを介す必要がなく、ある種の感覚でやり取りができる。
これは理屈じゃないから、ムッシュが天使について語りだした時、ぼくはとってもうれしくなった。

三四郎日記「吾輩は犬である。そして、天使でもある」



ムッシュが作ってくれたぼくの場所、そこはパリの家と同じ柵で区切られた田舎のアパルトマンの一角なのだけど、隣のバスルームと連結していて、そこは下が石のタイルだから、ぼくは自由に出入りすることが出来る。
ポッポとピッピのシートはバスルームの一角に敷かれているし、水のお皿もそこに置いてある。
今日は三回、そこでピッピをしたし、ポッポもやった。全部、命中。ムッシュに褒められた。

三四郎日記「吾輩は犬である。そして、天使でもある」



ムッシュがいきなり裸になって、お風呂に入りだした。
たまにムッシュがお風呂の中でぼくの身体を洗ってくれるので、お風呂のことは知っていたけど、ムッシュが入るのは見たことがなかった。
ちょっとびっくりしたよ。人間の裸・・・。
どんな風にお風呂に入っているのか、ぼくは小さいから覗くことが出来なかった。だから、何度もジャンプして覗こうとしたんだけど、やっぱり、見ることが出来ない・・・。
だから、ぼくはムッシュがお風呂に入ってるあいだ、ずっとお風呂の下の足ふきマットの上に寝そべって、ムッシュが出てくるのを待つことになる。
そのうち、退屈になって、ぼくは足ふきマットと戯れて遊ぶことになり、気が付くとそこで寝てしまった。

三四郎日記「吾輩は犬である。そして、天使でもある」

三四郎日記「吾輩は犬である。そして、天使でもある」



「三四郎、天使に生まれたからには、天使の役割を果たさないとならないよ」
ぼくが目覚めた時、ムッシュがそう言った。
天使の役割、という響きがぼくの中に残った。
「三四郎、ぼくは君の出現に感謝している。でも、きっと君はもっと多くの人を癒し、励まし、希望を与えていくことになる。わかるかい? それが天使の仕事なんだ」
ムッシュがぼくを抱きしめてくれた。
ぼくはムッシュの頬っぺたを舐めてみた。
温かい湿り気が心地よかった。

つづく。

三四郎日記「吾輩は犬である。そして、天使でもある」

はい、そして、ぼくも出演するテレビ番組についてのお知らせだよ。

『ボンジュール!辻仁成の冬のパリごはん』の放送時間は以下なんだって。
【BSP】2月23日(水・祝)21時51分~22時50分

そして、ぼくがやってくる前のムッシュの生活を記した『ボンジュール!辻仁成の秋のパリごはん』がまた放送されるんだって。ぼくはパリジャンだから観ることが出来ないけどね。
【BSP】2月19日(土)8時45分〜9時44分
https://www.nhk.jp/p/ts/6XW8NZ748V/schedule/

そして、ムッシュの文章教室。ぼくも参加するよ。下の地球カレッジのバナーをクリックくださいね。
わんわん♪

地球カレッジ



自分流×帝京大学

Posted by 三四郎

三四郎

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2021年9月24日生まれ。ミニチュアダックスフント♂。ど田舎からパリの辻家にやってきた。趣味はボール遊び。車に乗るのがちょっと苦手。