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父ちゃんが語る、小説、音楽、絵画、の融合について Posted on 2026/08/27 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
さて、今年、2026年の時点で、ぼくは、一つのチャレンジをしております。
それは辻仁成にとっての最初の表現手法である「音楽」そして、その次の手法「小説」さらには、最も新しく世に出た「絵画」、この三つの表現の緩やかな融合を目指して、2025年の初頭にこのプロジェクト「泡」がスタートしました。
毎日、不条理なニュースが世界各地から飛び込んできます。
それは戦争、分断、民主主義の崩壊、などを素にしたもので、それでも、人間はその中で通常通りの日常を懸命に生きています。戦争の影は次第に広がりだし、石油ラインへの不安定さも露呈しました。
ともかく、ぼくが生きてきたこの人生の中で、世界はもっとも不安定な時代に突入しているようです。
ぼくはこの今の世界を生きる人間の心の機微を自分なりに表現しようと考えました。その時、どうせなら、自分が続けてきた絵画、小説、音楽で同時に一つのイメージを形にすることは出来ないか、と思いついたのです。
先に行われた三越日本橋本店での個展「鏡花水月」63点の制作に1年を費やしましたが、その創作を始めた時、これを言葉でも表現してみよう、と考え、デザインストーリーズでの「泡」の連載をスタートさせました。(それは同時に、エックスで同時配信)、「鏡花水月」の絵を描きながら、午前中は小説「泡」を執筆していました。それを書き終わると、SNSを通して、不特定多数の方に読んでもらいました。ということで、ここは連動しています。

同時に、夜、だいたいは夕食後、寝るまでの時間でしたが、ぼくはギターを持ちだし、音楽の制作をスタートさせます。
そして、これは一人では表現できないので、フランスで知り合ったベーシストのホセ・ケンタウロス・スズキ、エリック・モンティニー、日本で長年一緒にライブをやっているパーカッションのASK、サウンドプロデューサーのジョンに声をかけ、「歌う詩人」プロジェクトがスタートします。
それらの曲は、「鏡花水月」や「泡」をモチーフとした儚い世界の幻想曲で、ぼくにとってはうまれてはじめてのプログレッシブロックと言われるジャンルの音楽になりました。
初ライブは、今年の7月、すべて新曲という異例のスタイルで世に出ることになります。
アルバムは現在制作中ですが、収録はすべて終えていて(個展開催中に、すべての録音を終えています)、現在最後のダビング、と、ミックスまで進んでいまして、10月20日にリリースを予定しています。
アルバム・タイトルは「詠み人知らず」に決定しました。
収録されている曲は、「詠み人知らず」「夢幻泡影」「悠久」「孤独な泡」など、8曲になります。8曲は少なく感じるかもしれませんが、一曲10分弱の大作がずらりと並んでいるので、ボリュームは十分。
当然、これらの楽曲は、絵画「鏡花水月」小説「泡」とリンクしています。
これは、ぼくが長く続けてきた主要な表現手段の総合的な融合と言えるでしょうし、世界的にみても、かなり稀なこと、かと思います。
ぼくにしか出来ないアートをやりたい、というのが、この三者が一体となる、ぼくのもっとも斬新な表現方法の源にありました。
この不条理な世界をぼくなりに形にした立体的な創作物となるわけです。
それは音楽家、小説家、アーティストをやってきた自分にしか出来ない、表現でもあります。

父ちゃんが語る、小説、音楽、絵画、の融合について



父ちゃんが語る、小説、音楽、絵画、の融合について

小説は、すでに、最初の連載時に読まれた方が多くいらっしゃると思いますが、去年の秋から、3か月ほどかけて、デザインストーリーズやエックスで発表をしてきました。多い時は連日書いてアップしていました。自分でも驚くような熱量が必要でした。
執筆時間にあてたのは、三四郎の散歩が終わった8時以降、昼ごはんまでの4時間です。この4時間で、だいたい、一話、を書き上げてその夜に配信をしていました。
配信をしてしまうと、書き直しが出来ないので、まったなし、のまるで新聞連載のようなスタイルになったのです。
この連載が終わってから、春くらいまで、数か月を要してリライトを行いました。その後、校正校閲があって、いよいよ、9月4日、ほぼ描き始めてから1年の歳月を得て、発売となります。
舞台を新宿と思われる都会に設定したのは、三つの表現物があまり似過ぎないことへの配慮もありました。自分が20歳のころ、新宿の歌舞伎町の入り口でアルバイトをしていたのです。
それはもうずいぶんと昔ですが、その当時の新宿と今の新宿は実はそれほど変わっていないんです。もちろん、ゴジラタワーのようなものはなかったし、現在は建物も新しいのが増えていますが、ちょっと路地に入ると、当時の名残は残っています。ぼくは青春期の自分を引っ張りだし、そこを舞台に、最初は青春小説という形を借り、まもなく幻想小説的となり、最後は家族の物語に昇華させたのです。
泡のように儚く消えるこの人生ですが、その弾ける瞬間の中に永遠があることを、主人公のしゅう君やあかりちゃんに、託した次第です。
読む人の愉しみを奪わないために、これ以上のあらすじは書かないことにしますが、我々人間が生きている不可思議を若い主人公たちに直面させ、彼らの生命力を信じて書かせてもらった作品となります。
表紙の絵は、三越日本橋本店で行われた個展「鏡花水月」に並んでいた作品の一つで、この小説をイメージして描いたものです。
この小説のあと、10月20日にアルバム「詠み人知らず」が出ますが、絵画、小説、音楽の三位一体が、何をこの世に届けることになるのか、どうぞ、ご一緒にご堪能ください。
ぼくにしか出来ないアートがそこにあればいいのですが・・・。作者。

2026年の記録。
7月、「歌う詩人」デビューライブ。
8月、三越日本橋本店、個展「鏡花水月」
9月、小説「泡」
10月、「歌う詩人」ファーストアルバム「詠み人知らず」

父ちゃんが語る、小説、音楽、絵画、の融合について



辻仁成 Art Gallery
帝京×パリ・オンラインアートカレッジ

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Posted by 辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。