PANORAMA STORIES
出雲大社、正式参拝 Posted on 2026/10/28 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
今回の日本弾丸ツアー、最終日にぼくが行ったのは出雲大社でした。しかも、なんと、正式参拝が出来たのです。
松江の方々を経由し、出雲観光協会の渡部さんと知り合い、正式参拝を予約してもらい、はじめて出雲入りをさせていただくことができました。
仕事で松江まで行くので、どうしても、悠久の歴史がある出雲大社で参拝をしたかった、のです・・・。
その夢が叶いました。
この渡部稔さんという方ですが、たいへん地元の歴史にくわしい方で、出雲の隅々まで教えてくださったのです。(すべてをここで説明できませんが、次の機会にゆずらさせてください)
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あいにく、曇り空でしたが、周辺の山々に沸き立つような雲がたなびき、まるで「歌う詩人」の「詠み人知らず」のような世界が出現していたのです。
「辻さん、これは珍しい光景で、たまにしか、この沸き立つ雲は見れませんよ」
と渡部さん。
ぼくは、あまりに美しいその風景に見惚れてしまいました。


最初に、渡部さんがぼくを連れて行ってくださったのは、「命主社」(いのちのぬしのやしろ)という小さな神社でしたが、ともかく、ものすごい存在感があり、その真横に屹立する大樹の存在にも圧倒されました。
この社の背後にある真名井遺跡からは、北九州から奉納されたと伝わる弥生時代(2000年前)の銅戈と、新潟県糸魚川市の翡翠の勾玉が発見されてます。何かわかりませんが、圧倒されるような深みのある空域でした。
訪れる人は極めて少ないということでしたが、渡部さん曰く、ここは地元の人たちにとってもっとも重要な社の一つ、ということで、ここから出雲の旅がスタートできて、幸いでした。(となりのヒトナリで、一瞬だけ、渡部さんに生配信で、ご説明頂きました、不意に思い付き・・・)


さて、渡部さんには出雲大社の周辺にある様々な社もご案内頂きましたが、やはり、今回最も大事な行事は、出雲大社の正式参拝です。渡辺さんにあらかじめ、ご予約をお願いしておりました。
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まずは、社務所に立ち寄り、受付をしました。この時、正式の方法で、ご祈祷料というのか、玉ぐし料というのか、を納めました。値段はお気持ちだということでしたので、失礼のない金額を渡部さんと相談の上、お包みさせていただきました。
それから、記帳をし、「きよかけ」とよばれる首にかける白い帯をかけ、御本殿へと・・・。


※ 大正4年奉納された鳥居です。当時日本一の鉄筋コンクリート製の鳥居だったようです。高さ23メートル、出雲大社御本殿24メートルより1メートル低く建てられています。

御本殿にて正式参拝をしました。
普通は、八足門の前で参拝をしますが、正式参拝は八足門内にはいり、御本殿の前で参拝が出来ます。
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1744年造営された現在日本一の神社建築なのだそうす。
なんと、平安時代には48メートルもの高さがあった、と言われています。それを裏付ける、2000年の発掘調査で巨大神殿の柱が出土しています。
平安時代の貴族の子供向け本である口遊みに雲太(出雲太郎…出雲大社)、和ニ(奈良の大仏殿)、京三(京の大極殿)と巨大建設の言い伝えが残っているそうです。すべて渡部さんからお聞きした内容です。
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先にも述べましたが、御本殿前には正式参拝の人しか入れません。
まずは、中に入ると、身を清める儀式があります。心が清らかになる瞬間でした。御本殿前の門内に人はいません。静寂に包みこまれた、特別な空域でした。
そのあと、御本殿の前に進み、「二礼四拍手一礼」で拝礼をします。ほかの神社とはここが違いますので、参拝をされる方は気を付けてください。

※ 本殿の真裏ですが、ものすごく力がありました。素晴らしい空域です。
今回、出雲大社の神職さまが、同行をしてくださり、参拝のあと、大社についていろいろと尊いお話をさせていただいたのです。
その時に、驚くべきことが起こりました。
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ぼくの日記などで何度も書いておりますが、霊的な場所に行くと、かならず、とんぼが目の前にやってきます。フランスでも、日本でも、しかし、ここではさらにすごいことがおきました。
とんぼが、ぼくの目の前で滞空し、神職が話をされているあいだ、ぼくを見つめたのです。30秒とかじゃないですよ、ずっと、です。ああ、お招きされたのだな、と思いました。
虫のことは何度もここで書いたり、しゃべったりいたしますが、このトンボというのはその中でも特別な存在でして、幸福を運ぶものとも言われています。
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その時、神職がこのようなことを言われました。
「目を開いても見えないもの、耳を澄ませても聞こえないもの」
実は、松江で書いた小説のタイトルが「見えないもの」だったのです。すぐさま、タイトルをそれに変更させてもらうことになります。
このことばは、ぼくがパリや東京の画廊で長年取り組んできた「見えないものたち」展とも意味を共にする尊いことばだったのです。
聞き間違いかもしれませんが、天照大御神のお言葉らしいです。
背筋をしゅっと駆け抜ける光を感じずにはおれませんでした。
神職のお話が終わると、とんぼは忽然と消えたのです。
車に乗り、出雲空港を目指す車内で、渡部さんに、
「とんぼのことお気づきになられましたか」
と訊きましたら、
「ええ、実に驚くべき光景でしたね」
というお返事でした。
その後、ぼくらは連絡先を交換させてもらいました。よくフランスにいらっしゃるのだそうで、またしても、新しいご縁が出来ましたね。神職さまにもお礼のお手紙をしたためるつもりでおります。
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出雲での経験は、今後のぼくの創作活動の大きな光になるはずです。松江まで行って、本当によかった、と思います。
ところで、ぼくは参拝の最中、何もお願いはしませんでした。何も、です。なぜでしょう、わかりません。
ただ静かに、「二礼四拍手一礼」させて頂きました。

※ 日本一と言われるおおしめ縄
長さ:約13.6メートル
重さ:約4.7トン
製作地:島根県飯南町
最新の架け替え:2026年7月21日だそうです。
現在では、御祈祷、結婚式、さまざまな祭事などが行われています。内部には270畳もの大広間があるんですって。これらはすべて、渡邊さんに教わったうんちくでございます。

Posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。


