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日仏出産の違い 母体のケア・赤ちゃんのケア Posted on 2018/11/28 尾崎 景都 日本語教師 パリ

妊娠中に通っていた助産師講習で、「ペリネ」という単語が頻繁に耳に入ってきた。辞書で調べると、「骨盤底筋群」のことで、骨盤の最下部にあり、恥骨と尾骨の間をハンモックのように繋いで内臓を支えている大事な筋肉なのだそうだ。講習で助産師さんがしきりにペリネと口にしていたのは、産後のペリネケアを呼び掛けるものだった。このペリネ、産後はかなり弛緩している状態。相応のケアをせずに放っておくと、骨盤が歪んだり、更年期に入ってから身体に悪い影響が出たりする可能性があるという。
 

日仏出産の違い 母体のケア・赤ちゃんのケア

産後1ヶ月健診の際に、ペリネケアの処方箋がもらえる。それを持って、助産師又はキネ(Kinésithérapie : 理学療法士、運動療法士)の元へ行き、ペリネのリハビリに励む。1回にかかる時間は30分ほど、それを大体10回、週一くらいのペースで通う。
フランスのペリネケアの嬉しいところは、保険でほぼ全額まかなえるということ。10回も受診できるのに、かかるお金はゼロ。もちろんほとんどの人が積極的に受診する。私は帝王切開だったので、ペリネの代わりに腹筋のケアでキネにかかったが、それも同様にこちらからの出費はほとんどなかった。
産後は赤ちゃんにばかりかまって自分のことは疎かになりがち。でもそんな余裕のない時期だからこそ、合間を縫って自分の身体のケアに励むのもいいかもしれない。
 

日仏出産の違い 母体のケア・赤ちゃんのケア

そして赤ちゃんの身体ケア。きっかけは産後1ヶ月。娘のコリック(黄昏泣き)がひどく、昼も夜もなく泣き叫ぶ娘に疲れきっていた時、知り合いに、Ostéopathe(日本で言う整体に近いような処置をしてくれる専門医)にかかってみたらどうかと勧められた。赤ちゃんに整体というのは聞いたことがなかったので不安もあったが、実際には優しく声をかけながら全身を隈なく丁寧に触っていくというものだった。
整体のおかげかどうかは不明だが、その後ほどなくしてコリックは治まり、その後も3ヶ月に1回、健診のつもりで通うことにした。右足首が少し曲がっているかな? と言って先生が娘の足首を軽くさすった(ようにしか見えなかった)その日の夜に初めてつかまり立ちに成功したということもあった。
ちなみに整体は国民健康保険の返金対象外なのだが、各々の任意保険へ領収書を送れば(保険会社にもよるが)全額返金されるので、金銭的にも痛手が少ない。
 

日仏出産の違い 母体のケア・赤ちゃんのケア

先生によると、赤ちゃん整体に定期的に通うという風潮はここ数年のもので、訪れる人も若い世代が多いという。私がお願いしている先生は、身体だけではなく心の動きにも目を向けましょうという話や、赤ちゃんが安心する身体の触り方を教えて下さったりするので、とても勉強になっている。
日本ではまだ一般的ではないようだが、赤ちゃん整体専門のサイトなども見かけるので、これから普及していくのかもしれない。

母子の身体のケアに積極的に取り組むフランス。その裏側には、少子化問題をベースに、育児の根幹ではない部分にまで経済的援助を惜しまない国の姿勢と、日本と比べて、金銭的にも精神的にも余裕を持って育児に向き合っている母親の姿が見える。
 

 
 

Posted by 尾崎 景都

尾崎 景都

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Keito Ozaki
パリ第7大学 言語音声学科 修士課程修了後、日本語教師として活動中。夫は料理人。