PANORAMA STORIES

サグラダファミリアの今とこれから Posted on 2020/09/22 林 真弓 通訳・ガイド・イベントコーディネーター バルセロナ

新型コロナの感染拡大により、急にサグラダファミリアがその門を閉ざしたのは3月13日。
同じ日に建設工事も中断された。
巨大な未完の教会サグラダファミリアは1882年の着工から何度も危機を経験してきた。
主任建築家アントニ・ガウディの死、スペイン内戦。
また贖罪教会であるこの教会は、信者の寄付から全建設費用が賄われているため、現在のように世界に知られる教会になる前は資金不足により何度も工事が頓挫している。

サグラダファミリアの今とこれから

90年代くらいから世界の注目を浴びるようになり、訪問客の増加と共にその入場料収入により、資金的な問題はクリアされたように見えた。
最新技術の投入もありその工事は急ピッチで進み、何百年もかかるだろうと言われていた完成予定日が、ガウディ没後100年にあたる2026年と発表された。
あまりにも劇的に繰り上げられた完成予定年は、当初市民も疑いの気持ちで受け止めていた。
ところが最近の順調な進捗具合に「これは本当にやり遂げるかも」と態度を改めていたところだったのである。
完成時には全部で18の塔を擁する教会となるのだが、そのうちの8本のみ完成。
あと10本もあるのに、と思っていたら聖母マリアの塔を筆頭に福音史家の4本の塔、一番高くなるイエス・キリストの塔が同時進行で少しずつ高くなり、1か月の伸びしろが目に見てとれるほど。
その進展は気持ちいいほどスピーディーだった。
バルセロナから90kmほど離れたところに巨大な作業場があり、そこで組み合わされた巨大パーツが教会建築現場では上に載せられるだけなので、急に伸びているように見えるのである。

サグラダファミリアの今とこれから



このように折角好調に進んでいたのに、3月半ばスペインはロックダウンに入り、外出は必要最小限なものだけに制限される。
5月末に段階的解除が始まり、各地の工事現場で作業が再開されるようになってもサグラダファミリアの工事現場は無人であった。
それから何カ月経ても工事再開の兆しはなく、「建築資金が底をついた」という噂を耳にしていた。
それがつい先日9月16日に噂が本当で、2026年完成は不可能だということが正式に発表されたのである。

サグラダファミリアの今とこれから

国境が開いてからも、スペインではコロナ感染者数が再び増加し、バルセロナは観光客の姿がほぼない夏を過ごした。
サグラダファミリアの1日平均入場者数は昨年7月で1万5600人。
これが今年は1ヶ月で2千人に満たないという。
この状況を受けて現在は入場を週末だけに限定している。
また毎月3日ほど市民であれば無料で入場できる日が設定してあり、この予約チケットはあっという間に売り切れてしまう。
公式サイトには「普段建設工事で一番迷惑をかけてしまっている市民の皆様に無料で公開します」と書いてある。
ロックダウン後最初に教会に招待されたのは医療従事者等コロナが最も猛威を振るっていた間も命を張って働いていた市民だった。

サグラダファミリアの今とこれから

昨年1年間のサグラダファミリア入場者数は450万人。
同教会建設委員会代表を務めるエステべ・カンプス氏によると、2020年の年間収入は元々1億3百万ユーロの見込みで、その内約5千万ユーロを建築費に充てる計算であったらしい。
残りは不測の事態で観光客が減少したときの予備費になる予定だったとか。
それが訪問者激減で今年の収入見込みを1700万ユーロと見直した。
これでは建築予算の3分の1しか賄えない。
結局、建築資材を購入済みである聖母マリアの塔の建設だけを3週間後再開することになり、その完成予定を2021年末とした。
その他の塔の建設はとりあえず中断。
この残念な発表にカンプス氏は「しかし私たちはガウディの計画を必ず実現します。
建設は完成するまで続行します。」と言葉を添えた。

サグラダファミリアの今とこれから



今週末、サグラダファミリアは例の予約制市民無料開放日にあたり、内部にはマリアの塔の最上部に設置される星の一片が展示された。
教会で2番目に高い138mとなるマリアの塔はあと26mのところまで来ている。
その先端に輝く十二芒星は全長7m、ガラス製で夜は内側から点灯されることになる。

サグラダファミリアの今とこれから

コロナの収束も経済の回復もサグラダファミリアの完成もめどの立たない現状だが、できることをしながら前を向いて生きていくしかない。
来年末新しく完成する塔に夜間明々と点灯される巨大な星を想像しつつ、実際の姿を見られるようになる日を今から楽しみにしてやまない。




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Posted by 林 真弓

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Mayumi Hayashi
通訳は主に英日だが、使用可能言語は、日、英、伊、西、仏。
オーストラリア、キャンベラ大学で応用言語学の修士号を取得したのち、地元岡山の大学にて英語非常勤講師。英語以外の言語を学びたくなり、32歳でフランス、トゥールーズに語学留学。その後イタリア、ベネチアで約9年の滞在を経て、現在バルセロナ在住。イタリアで知り合ったイギリス人の夫とスペインに住む、という??な、でもある意味非常に欧州的な状況を楽しむ毎日である。