ノルマンディ、ツジ村便り
辻村相談窓口、「偶然と必然」 Posted on 2026/06/20 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
パリは熱波が凄いらしくて、当事務所のスタッフに、苦しい場合は、そく休むように指示を出した次第です。最高で42度くらいになるようですね・・・ひゃあ。ノルマンディは、朝晩ぐんとひえて、寒いくらいです・・・。
ということで、さっそく、辻村相談窓口を開かせてもらいます。今回は、二ケ月連続で同じ質問を投げかけてくださった方のご相談にお答えします。無視していたわけじゃないんです。でも、また同じ質問が来たので、これは答えないとならない、と仙人は思った次第で、あります。
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匿名希望Yさん
「辻村相談窓口への質問です。生きていると、これは偶然なのか?それとも必然なのか?と思う時があります。偶然と必然の概念は、西洋と日本でも違いがあるようですが、辻さんは偶然と必然の違いをどのように考えていますか?」

おこたえしまーす。
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「難しいご質問ですな。こういう問いかけ、きっぱりとした答えはないですよ、最初に言っておきます。偶然か、必然かって、どっちでもええじゃないか、と言ったら、身も蓋もないですよね。あはは、ごめんなさい。必然というのは、必ず、そうなること、を言いますね。一方、偶然は、予期しないことが起こること、です。もっといえば、因果関係に関係なく、思いもよらないことが起こる、という事象のことです。実際はぜんぜん、違うものなのですが、何かが、あなたの身に起こって、「え? これって偶然なの、それとも必然なの? 」と思うことが時々ある、ということですよね。わかります。これは偶然じゃなくて、必然だったのかもしれない、って一度や二度は誰でも経験があるでしょう。
生きていると、いろいろなことが次から次に起こっています。でも、その起こったすべてのことには、なんらかの原因がありますよね。よく考えると、ぼくはあると思うんです。何かが起こった、ということは、その前に、辿れば、そこに至る何かがあった、はず。これを哲学では「因果律」と言います。なんらかの原因の結果、そういうことになっている、という考え方で、原因のない事象は存在しない、ということです。古典物理学とか、相対性理論ではもう少し角度が異なりますが、でも、因果律というものは無視できそうにないです。
これは偶然じゃないか、と思うことをぼくも物凄く経験していて、その都度、奇跡だ、これは奇跡だ、と大騒ぎしているんですが、でも、その偶然って、生きてきたこの人生の積み重ねの、ある意味、超数学的な結果なんじゃないか、と思うことがあります。もちろん、偶然も、いいこと、悪いことがありますから、悪いこともその積み重ねか、と言われると反論しようがないですが、紐解くと、過去の様々な経験の中にその因果が隠されているような気がします。
大昔、トルコのイスタンブールでサウナに行ったんですが、その受付の子がぼくの読者で、しかも韓国人で、辻仁成さんですか、と英語で言われたんですが、ぼくは、びっくりしましたが、やがて、受け入れていました。その人がなぜ、イスタンブールのサウナの受付で働いていたのかわかりませんし、なんで、ぼくのこと、たまたま読者だったとしても、韓国の若い女性が、ぼくの顔の識別が出来るほど、ぼくを知っているって、おかしくないですか? 一言も日本語が話せない子なんですよ。そして、ぼくもその日、なぜ、一人で、イスタンブールのサウナに行ったか記憶が鮮明じゃないんです。酷い恰好だったことだけは覚えています、笑。でも、しばらくして、必然がいくつか重なって、こういう偶然も起こりえるな、と思いまして、それを小説の題材にしたことがあります。偶然は必然の結果とは思いませんが、その偶然には意味がある、と思うようにしています。ぼくがノルマンディで愛犬と暮らしているのを、40年前のぼくは想像も出来ませんでしたが、現実にぼくはここで生きていて、英仏海峡をみるたびに、なんでここ? と苦笑している毎日です。ほんとですよ、まさか、ノルマンディで暮らすようになる、とはね、びっくり・・・。そもそもなんでやろ、ってノルマンディとの出会いをさかのぼると、15年くらい前に辿り着きました・・・。ああ、あれがきっかけ、あれ!?
で、どうするか、つまり、因果律のせいだな、と決めつけ、考えるのをやめるんです。一番最初に言ったように、どっちでもええじゃないか、と言ったら、身も蓋もないですが、いいですか、身も蓋もないのが、この宇宙なんですよ」

父ちゃんの独り言、&、近況のようなもの。
HOKAのスニーカー、なかなか軽く、走りやすいです。頭を使い過ぎるので、運動はいいバランスを持ち込んでくれます。
今日は絵筆がいまいちで、気に入らないので、ボツにしました。絵を描く時にも、偶然と必然というのがありましてね、この偶然は、必然の上になりたったご褒美だな、と思うこともあります。ボツになる絵は、一年くらい、放置します。また、ある時、生き返ることがあるんですよ。
最近、超能力の研究をしています。あはは。怪しい。

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日本の個展は8月5日から11日まで、三越日本橋本店、特選画廊、辻仁成展「鏡花水月」。
10月22日から25日、パリ、コンコルド広場でのモダン・アートフェアに出展。コンコルド広場特設会場にて。
11月5日より、リヨン市で個展。先日、第18回リヨンビエンナーレに公式参加が決定しました。面白いことが出来るといいですね。
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