ノルマンディ、ツジ村便り
辻村相談窓口、「ごえん」 Posted on 2026/06/28 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
さて、相談窓口、開店!
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匿名希望Dさん
「辻さん、ご縁について、再度お聞きしたいのですが、辻さんのライブに頻繁に行きますが、辻さんとは知り合いになったことがないです。これは、どういうことでしょうか? 縁がないのかな、と思いがちですが、別にそれでもライブには行きます。辻さんには、そういう経験はありますか? 私と同じような気持ちにはなりませんか?」

おこたえしまーす。
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「そうですね、いい質問ですよね。ぼくも、何でこの人の本をよく読むのに、知り合いじゃないんだろう、とか、この人の絵が好きでよく美術館に行くけれど、何で友だちじゃないんだろう、と思った人は、それなりにいますが、だいたい、縁があってもぼくは変わり者ですから喧嘩別れをしたり、憎しみあったりするのが常ですので、ま、あまりそこはどうでもいいんじゃないか、と思って、それ以上は特に考えません。ただ、好きで気になるので、美術館に行ったり、その人の本を読んだりしますが、影響を受けているので、それこそがご縁だろうな、と思っています。
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面白い話をします。ご興味ないかもしれませんが、参考になれば・・・。昔、ぼくはアンディ・ウオーホールが好きで、会いたいなと思ってNYに行ったことがありました。それだけが目的じゃなかったんですが、影響を受けたアーティストの中の一人でしたからね。ある日、彼のポストカードを書店で買って、ダウンタウンの割と危険な地域を散歩していたら、目の前にタクシーが止まって、中からアンディが出てきたんです。わ、ほんものじゃん、と思わず口走り、持っていたポストカードを見せたんです。サインください、とひどい英語で言ったんですね。25歳くらいの時でした。そしたら、アンディ、自分のペンを取り出して、そこに丁寧にサインをしてくれたんです。そのサインしたものは、紛失してしまいました。「持っていたら、高額になったね」とか言われるんですが、そういうところを気にするような人間じゃなくて、よかった、と思っています。ぼくの記憶の中に、生前のアンディがいて、彼のいい面を見ることが出来、納得しています。「この辺は危ないから、安全な地区に戻った方がいいよ」とアドバイスをくれました。一応、会話も成り立っています。素晴らしい縁で、その後、何もないんですが、これ以上を求めないところがいい話ですよね?
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もう一つ、あって、これは今まで言わなかったんですが、今日の今日だから、ちょっと書かせてもらいますが、ぼくは三島由紀夫の文体の影響を若い頃けっこう受けていて(海峡の光、とかね)、ま、すごい作家だな、と思っていたんです。で、三島さんが美輪明宏さんと仲が良くて、三輪さんの「ヨイトマケの歌」を訊いた時に、すごいなこの人と思っておりました。そしたら、30歳前後のころに、ある人の家に招かれたら、三輪さんがいたんです。数人有名な方がいて、とあるデザイナーさんに、「君は歌手なら、歌ってみてよ」みたいなことを言われましてね、大変当時は有名な方で、その横に三輪さんがいらした。ぼくは歌わなかったです。なんでか、わからないですが、気にくわなかったんですよ、その命令口調が。そしたら、三輪さんが、「やめなさいよ、歌いたくない人に無理やり歌わせる必要ないでしょ」とびしっと言われたんです。ぼくは三島さんのことなどを訊きたかったけれど、やめました。三輪さんとは実はその一回だけのご縁でしたね。三輪さんと三島さん、めっちゃかっこいいお二人だったな、と思っていたかったので、今日、お亡くなりになったというニュースをきいて、(母さんと全く同じ歳なんですよね)ちょうど、思い出していたところです。なぜ、知り合いになったり、ならなかったりするのか、というのは、タイミングもあるでしょうが、それがいいんだ、という距離感を意識が測っている、とぼくは思っています。そういうのを飛び越えて、見えない感じで猛進し、壊滅的な関係になることの方が残念ですからね。自分がかなり難しい人間であることを重々承知しているので、その距離感は大切だな、とぼくはいつも思っています。北野たけしさんね、ぼくは彼の映画が好きで、一度、テレ番組にゲストで呼ばれたことがあったんですが、テレビ局の人が驚いていました。たけしさんが、あんなに楽しそうにゲストと話すことはない、ということで。笑。収録が終わった時、自分のシナリオを渡そうと思って持っていたでんす。いつか、たけしさんに出演してもらいたいと思って書いた短編シナリオ本でしたが、ご挨拶をして、笑顔で別れて、終わりました。渡さないでよかった、と思っています。ぼくのことですから、いつか嫌われていたでしょうしね。このように、縁というのは、無理やり出会おうとろくなことはないので、遠くから見守ることが出来たら、そっとしまっている方がぼくの場合は多いです。三輪さんは、会ってゆっくりとお話をしてみたかったですが、当時ぼくは寂聴さんと仲良しで、三輪さんについてはよく話を聞かされていたので、それで十分だったかもしれないです。寂聴さんとは、そう言えば、ものすごいご縁がありましたが、彼女が天国へ行く最後の十年くらいは、頻繁なやりとりはなく、むしろ、距離が出来ていました。ま、一番いい時の思い出をいつも持って生きています。人間って、永遠に仲良しって、なかなか、難しいですよね。あれ、あの人、今どうしているんだろう、あの頃あんなに仲良しだったのに、って人、いませんか? たくさんいますよね。それが人生です。へたにべったりするとね、よくないです。ずっとファンでい続けているアーティスト、いますよぼくにも、ピンクフロイドとか、でも、昔の歌を聴くだけで、会いたいとは思わないです。影響を受けているだけで幸せでした。そのアーティストが、輝いていることがぼくにとっては大事なことで、それもなかなか、難しいですものね、期待もせず、見放すこともなく、いい距離感で、同じ時間を楽しんでおります。「辻さんも昔はよかったけれど、最近はちょっとね」とよく言われます。「辻とか、ぜんぜんついて行けない。いろいろとやりすぎだから」とか、よく言われます。「異次元すぎて、何もの?」とか、それでよくないですか? 昔、26歳くらいの時に、ステージ上で満席の会場に向けて、よく叫んでいました。「俺についてくるな!」あはは、大うけでしたよ。喝采に包まれたのを覚えています。ところで、みんな離れてしまいましたが、お元気ですか?」


父ちゃんの独り言、&、近況のようなもの。
でもですね、個展会場に、昔からのファンの人がぼくの絵をじっと見ているのを、遠くから見て、あ、いた、と思ったりしている父ちゃんなんです。離れていく人も多いし、引き留めることはしませんので、どうぞ。でも、自分の中では、わかっているんです。ぼくの作品が好きな人が、ぼくは嬉しくなります。「どうして、こんな世界を描けるのですか」とパリの個展会場で、日本人に言われたことがあって、「そうですね、それはあなたがよく知っているんじゃないですか」と答えたことがあります。ぼくはね、めんどうくさい人間ですが、そういうのも全部ふくめて、アーティストとして認めてくださっている人がいるのは、知っています。数は少ないでしょうが、それは大きなぼくの励みにもなっているんです。それだけは、付け加えさせてください。本当に応援されているものが、分かる時に、作家は嬉しいんですよ。
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8月5日から、三越日本橋本店、特選画廊で、辻仁成展「鏡花水月」やります。鏡に映る花、水に映る月です。もののあわれ、を描いた、辻仁成の新境地ですが、7月27,28の「歌う詩人」ライブはこの個展の世界をすべて音にして、この世界の孤独な泡、をお届けします。
セトリ。タイトルは基本、全部、仮、です。笑。
1,「だれのじんせいだよ」
2,「夢幻泡影」
3,「千年前(仮)」
4,「詩人(仮)」
5,「悠久」
6,「孤独な泡、bulles solitaires」
7,サンジェルマンデプレの夜
8,「命の詩、2026」
です。各局、10分近い組曲です。
このライブは、すでにぼくの中では伝説です。二度とない、今のぼくの「精神」をザンク・サンジェルマンⅡ(フランス語発音に変更になりました)が、ぼくに乗り移って演奏をしますので、お楽しみに・・・。




