ノルマンディ、ツジ村便り

辻村相談窓口、「幸福に違いはあるのか」 Posted on 2026/06/30 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
相談が来ています。
さっそく、相談窓口をオープンさせて頂きます。
あ、ノルマンディは気温がぐんとさがり、ジャケットを着ないと外出出来ない感じに戻りました。パリはまだ暑いみたいですね。来週、6日くらいからパリでまた40度近いカニキュール(熱波)到来らしいです。やれやれ。

匿名希望Gさん
「辻さん、私の周りにいる、知り合いとか友だちとかですが、家族がいて、仕事も順調で、今日はどこどこのホテルでご飯食べたの、とか写真送り付けられたり、自慢のような感じで、ご主人の優しさとか、でも、喧嘩しているの、とかいいながらも、仲睦まじい感じが伝わって来て、友だちなんだから一緒に喜ぶべきかもしれないのですが、自分にはそういうものが一切ないんです。幸せとか、幸福とか、おひとりで暮らされている辻さんにはわかってもらえるのかな、と思い相談をしています。辻さんはいつどこで幸福を感じていますか? 家族がいた頃のご自分と、一人でノルマンディで暮らされている今と、幸福に違いありますか?」

辻村相談窓口、「幸福に違いはあるのか」

※ 急に納豆焼きめしが食べたくなって、何にも入らない納豆焼きめしです。米を少量のごま油で炒め、少しニンニクいれて、納豆を加え、米をやや焦がし、笑、完成です。米をよく炒めるのがコツです。たまに、お酢を少し、垂らします。小さじ半分くらいかな。醤油は焦がして、塩胡椒、胡椒多め。納豆は普通に・・・。



おこたえしまーす。

「なかなか、答えにくい質問をはっきりとおっしゃってくださり、ありがとうございます。ぼくは、幸せだと思っている、というか、幸せだと自分に常に言い聞かせています。誰と比較するとかではなく、毎朝、ちゃんと起きると、三四郎が尻尾振って出迎えてくれるし、ご飯は毎日、自炊ですが、自分が育てている野菜などを食べることが出来ているし、お金はあまりないですが、贅沢はしないので、何とか生きていけますし、組織に入ってないので、人間関係で苦しいこともありませんし、戦争のような敵はいませんし、忘れっぽいので恨みつらみはもはやないですし、三四郎がごはんを食べてくれて、横に寄り添ってぼくのギターを聴いている姿に、幸福をいくつも見言い出すことも出来ます。今も、彼は足元にいて、森を見ています。たぶん、敵が来ないか見張っているんです。彼の敵は、鳩とか、カチガラスだと思いますが、こういうのをぼくは幸せの素と呼んでいます。もしかしたら、人によっては、ぼくのことを、可哀そうな人、と思っているかもしれません。結婚もままならないし、誰ともうまくいかないし、自分勝手で生きにくそうだし、波乱万丈だし、日本社会には適合できないからノルマンディにいるんですよね、と言われたこともありますし、ね。笑。

あなたに言いたいことは一つです。人と自分を比較しない方がいいです。幸福の価値観なんて、他人にはわかりませんよ。いつまでも誰かと自分を比較していたら、そりゃあ、いつまでも幸せにはなりませんよ。みんな価値観が違うし、別の人間で、その人と自分を比較して、自分は不幸だと思うのこそ不幸だと思います。人生を損しているように思います。たぶん、人との比較をしなくなれば、あなたはもっと自分の人生が楽しくなるのじゃないですか? 気にしないことです。人は人、自分は自分でいいじゃないですか? お隣さんが高級レストランに食事に言って自慢されたら、そういう人もいるんだ、でも私はそうじゃないのでいい、と思えばいいし、同じことをしても幸せになるとは思えません。ぼくなんか、外食は滅多にしないし、一人でご飯食べる時も、ちゃんと綺麗に盛り付けて、みんなに見せびらかすために写真を撮影して「父ちゃんの普段着飯」に投稿して、ある種、自慢して、勝手に、喜んでいます。でも、心がきつい時も月に何度かあります。そういう時には、キッチンも散乱するし、冷凍食品を解凍してつまんで、ウイスキー浴びて寝ます。人間ですから、そういう日もままあります。しょうがないな、こんな時も俺だから、認めてやろう、と思って、また新たな気分で生きるんです。三四郎のおかげで、人生は待ったなしで、うんちさせにいかないとならないし、病院連れて行くし、肛門とか掃除するし、しつけてやるし、でも、そんな面倒くさいことの中に、自分が与えられている生を感じます。嘘のない身の丈に合った人生を生きてやろうと思っています。ぼくもたまに、人が成功をするニュースが飛び込んでくると、くそー、と思わず思いますよ。だって、人間だもの。あはは。でも、ぼくはぼくだ、一生かけて自分のスタイルを貫こう、と思い直して、先に行くことにしています。自分は自分。これが人生の鉄則ですよ。無理しないで、がんばってください。えいえいおー」

辻村相談窓口、「幸福に違いはあるのか」

※ ご馳走です。感謝をしながら、頂きました。いい一日を今日もありがとう。自分、よくやった、と褒めてやります。大事ですぞ。



父ちゃんの独り言、&、近況のようなもの。
今は、8月前半の個展へむけて、頑張っています。2026年のメインイベントですからね、そこが超楽しみです。ゴメスさんに、あれこれ注文して、素晴らしい個展になるように、頑張っています。そこにきっとぼくの人生の支柱のようなものがあるんでしょうね。一年間、描き続けた息子たち、63人が、ずらっと整列します。初の大規模展で、このような大きなものはもうやらないかな、と思います。郵送費とか、諸々、大変なので、日本での個展は減っていくでしょうね。赤字とは言いませんが、経費がかかって、今はしょうがないと思っていますが、そこはちょっと悩みの種です。東京以外での個展も、輸送問題が大変なので、難しいですし。ベルギーとか、スイスとか、イタリアとか、少し欧州でもう少し頑張らなきゃいけないな、とは思っています。リオンは、すべての作品を自家用車で届けますので、輸送費は高速代だけ、笑。そういう意味では、11月のリオンは、ビエンナーレにも関わることが出来るので、刺激的ですね。さ、2026年、ここからが大勝負です。夢を追いかけ続けることが出来ているので、それはぼくにとって間違いなく、幸せのベースになっています。絵に没頭すると、何も食べないでも平気です。そのうち、足腰が弱くなったら、介護の人に来てもらうようにしますよ。うちの母さん、91歳、美輪明宏さんと同じ歳なんです。家に帰りたい、と弟に強く訴えているので、そりゃあ、自宅が幸せですよね、どんなに介護病院が立派でも、・・・来月、母さんと3人で話し合って、介護、どうするか決めます。母さんに苦しい思いをさせたくないので、幸せな最期を用意するのがぼくらの仕事だね、と弟と話し合っています。なので、家に手すりをつけたり、いろいろと工事もしはじめています。そんな近況です。

辻村相談窓口、「幸福に違いはあるのか」

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