自分流・日々のことば

日々のことば「前へ進む」 Posted on 2026/06/27 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
不思議なことがありました。
一昨日のことですが、絵を描いていたら、羽音が聞こえたんです。
蜂とか蠅ではない、パサパサとう羽ばたきでした。
何度か筆を止めて、振り返ったのですが、どこを飛んでいるのか、見えなかったんです。
それで、また、絵を描いておりましたら、背後で、パサパサと今度はもっとはっきりと聞こえたので、振り返りましたら、エメラルドグリーンのとんぼが、白い壁の中心で滞空するとか、そういう感じで、羽ばたいていたんです。
「わ、美しい」
この世のものとは思えないとんぼだったんです。
「逃がしてあげなきゃ、ここに迷い込んで出れなくなったんだな。逃がそう」
ぼくはゆっくりと近づいていったのですが、白壁の上のそのとんぼがですね、なんと目の前で、ふっと、消えちゃったんです。
「え、え、え、なんで、どうして?」
とキツネにつままれたような感じで、そこら中探し回ったのですが、見つかりませんでした。ぼくのアトリエは元工房だったので、がらんとしており、その白壁は普段は絵がかけられてある、いわばショールーム的な役割をするための展示壁なのでした。
周囲には何もないんです。
だから、飛び去るにしても、音もしないし、エメラルドグリーンなので、逃げようがないんですが、消えました。
その時、ふっと思い出したのです。
あ、そういえば、前にも見たよな、こんなとんぼ・・・。その時、写真に撮影して、たしか日記にアップしたんじゃなかったっけ?
で、とんぼ、でデザインストーリーズを検索をしたらいくつかの記事の中に、その時の写真を見つけたんです。
奇妙なことに、ちょうど一年前の記事で、しかも、同じ日付でした。
ここにその時の日記のURLを貼りますので、読んでみてください。

そして、その時に撮影したライトブルーのとんぼがこちらです。
まったく一緒でした。
もしかすると、この時期、ノルマンディ周辺で出現するとんぼかもしれません。
昆虫の生態に詳しい人に聞けば、一瞬で、なぞが解けたかもしれませんが、ぼくはこれは何かのお告げというか、メッセージを運んできた天からのメッセンジャーじゃないかな、と思ったんです。笑。
何でもすぐ、そういう風に解釈しちゃう空想壁が半端ない父ちゃんなので、お許しください。
「虫は友だち、鳥は親友」な自然を愛する、父ちゃんなのです。

日々のことば「前へ進む」

日々のことば「前へ進む」



「虫の知らせ」というと、悪いことが起こりそうな予感、ということになりますが、ぼくにとって今回の出来事はとってもいいメッセージを連れて来てくれたメッセンジャーにしか、思えないのです。
ぼくが受け取ったメッセージは、「前へ進め」というものでした。
辻さんって、なんでも都合よく解釈できる人ですよね、と言われそうですが、はい、その通りでございます。だって、そんなに美しいとんぼがですよ、一年後にもう一度出現して、しかも、目の前で何かを手渡すように、消えてみせたんですから、いい意味での虫の知らせに決まっている、と思いました。
前にも書きましたが虫の羽音って、ちょっと神聖な感じがしませんか? ぼくだけ?
さて、このエメラルドグリーンのとんぼはなぜ「前へ進め」と言いに来たのでしょう? なぜ、そう思ったのでしょう?
もしかしたら、ぼくは今、もっと頑張れるタイミングにいるのかもしれません。もっと自分の想像力を発揮させられるタイミング。だから、背中を押しに来た! あはは。
笑って済ませられる話なんですが、実際に目の前で消えて、調べたら、ちょうど一年前の同じ日に、ここにいた、っていうのも、なんかね、無視できないですよね、虫だけに・・・。笑。
とんぼがあなたの前に出現をしたら、「前へ進め」と言いに来た使者だと思ってください。ぼくらは、自分自身のせいで、停滞しやすいんです。余計なことで悩み、くだらないことで立ち往生してしまいます。そういう時に、「前に進め」「前に進む」「前進」というイメージは大切です。
なんだっていいんです。モンシロチョウでもいいです。ものごとをいい風に解釈して、自分をアップさせる天才になることが大事だという話しなんです。☜ええええ、そうなんだ!
人間社会に染まりすぎると、そういう純粋な示唆を見失いがちなりますからね。第六感を研ぎ澄まし、さ、一緒に、前に進みましょう。
えいえいおー。

日々のことば「前へ進む」

自分流×帝京大学
辻仁成 Art Gallery

日々のことば「前へ進む」

個展のお知らせです。

東京:8月5日から11日まで、三越日本橋本店、特選画廊全面、辻仁成展「鏡花水月」
パリ:10月22日から25日まで、コンコルド広場の特設会場で、モダンアートフェアに、参加。
リヨン:11月5日から3週間、主催はギャラリー48。本個展は第18回、リオン・ビエンナーレの公式プログラムとして認定頂きました。

日々のことば「前へ進む」



posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。