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ザ・インタビュー「コロナ最前線の医師に聞く、コロナに立ち向かうために今必要なこと」 Posted on 2021/03/03 辻 仁成 作家 パリ

前回、日本のコロナ最前線で活躍する医師の声をお届けし、大きな反響をえた。
今回は、さらに踏み込んだ、インタビューとなった。
コロナから身を守るために必要な、最前線の現場の医師たちからの、感染を防ぐための具体的な助言をお届けしたい。これは必読である!!

帝京大学付属病院、コロナ専門病棟を指揮するコロナ班の若きチームリーダーである杉本直也先生と、熊川由理看護師長がインタビューに応えてくださり、生々しい現状を知ることが出来た。
二人の情熱ある医療従事者としての姿勢に、共感しっぱなしであった。
ぜひ、この二人からの熱いメッセージを読んで頂きたい。

ザ・インタビュー「コロナ最前線の医師に聞く、コロナに立ち向かうために今必要なこと。第2弾」

ザ・インタビュー「コロナ最前線の医師に聞く、コロナに立ち向かうために今必要なこと」



 さて、インタビュー前編(インタビュー前編へはこちらから➡️ )の終わりにワクチンの話が出ましたが、杉本先生はやはりコロナ収束の希望は治療薬よりワクチンだとお思いでしょうか。

杉本 現状使用できる抗ウイルス薬の効果は限定的で、発症から時間が経っており、すでに重症化している方や、どうしても効果のでない人がいますので、まずは、罹らない、重症化させないということが大切だと思います。そのための一つの希望がワクチンです。有害事象も言われていますが、効果をみると、メリットの方がかなり上回りますので、リスクの高い方は優先して打つべきかな、と個人的には思います。

 日本には、ファイザーとアストラゼネカのワクチンが入ってくる予定なのでしょうか。

杉本 ニュースではファイザーと、そして、アストラゼネカは日本でも生産を始めると聞きましたが、病院には実際の情報としてまだ何も入ってきていません。

 1日でも早くワクチンの接種が始まればいいと思うのですが、ワクチンは病院で行われるのでしょうか、それとも、ワクチン会場のようなものが作られるのでしょうか。

杉本 インフルエンザワクチンと違い、かなり対象者が多いと思いますので、おそらく病院のみだと対応できないと思います。街の診療所を合わせても対応できないくらいの数になる可能性がありますので、報道ですと、公共施設を利用して接種スペースを確保するということも聞きました。そういったモデルが今後いくつか検討されるのではないかと思います。

ザ・インタビュー「コロナ最前線の医師に聞く、コロナに立ち向かうために今必要なこと」

 今、帝京大学医学部附属病院のICU占有率はどれくらいなのでしょうか。ICUに入って生還される割合なんかも知りたいです。

杉本 当院のICUは2種類ありまして、交通外傷を含め、命にかかわる病状で運ばれてくる方が収容される高度救命救急センターのICUと、手術後の方や院内で急激に症状が悪化した方の入るICUがあります。コロナ専用で確保している病床は両者合わせて6床あります。常に半分以上が埋まっていますが、他に、確定診断はまだで、コロナ感染が否定できない方のベッドも確保しています。また、一般のコロナ病棟に入院されている方が重症化した場合のスペースも取っておく必要がありますので、完全に埋めるということはしないで、1床、2床、空いた状態で受け入れています。特に患者が増えた先月は、それらがすべて埋まってしまうような状況もありました。ICUに入った方のうち、少し前までは7割くらいは良くなるという印象でしたが、ここ最近は、基礎疾患や高齢の背景から、半分くらいの方が亡くなってしまうような状況です。

 フランスで、コロナにかかって入院した家族と面会ができない、死ぬ直前まで会わせてもらえない、と、遺された家族がその現状に対し声を上げていますが、日本はどのような状況なのでしょうか。

杉本 当院では亡くなられた方のお身体を包んで、家族1名のみ面会することができることになっています。ご家族にとっては辛い状況だと思います。



 フランス、というか、ヨーロッパではこのコロナ禍でトリアージせざるを得ない状況が続いているのですが、日本はどうでしょうか?

杉本 基本的には患者さんに優劣をつけずに診療にあたっています。一つ、トリアージかどうかわかりませんが、人工呼吸器を使うかどうかは場合によって議論が生まれるところです。極論、人工呼吸器というのは治す治療ではなく、時間稼ぎするような治療にあたります。ただ、基本的には感染症なので、時間稼ぎをする間の体力が持てば改善する可能性もあります。しかし、中には高齢で、例えば、もともとタバコをたくさん吸っていて、肺機能の余力がないところにコロナウイルスが感染し、ウイルスの勢いも強く、救命できないと考えられる場合、本人の苦痛を伴う人工呼吸器は使わないという選択肢も生まれてきます。これは非常にデリケートな問題であるため、私たちだけで決めることではなく、ご本人、それから家族と十分協議した上で決定します。

 今お聞きした感じでは、まだ余裕があるという感じがしました。つまり、フランス、ヨーロッパではその余裕もない。人工呼吸器が足りないので、誰に呼吸器を使うか、スペインなんかは医療が崩壊していますし、患者さんが廊下や救急車の中で待機しているというような厳しい状況です。日本はまだそこだけ余裕があるということですね。

杉本 もし、状況が悪くなれば予定手術も全部中止して受けざるを得ないということも考えられますが、幸いそこまでではないです。

 日本は今、正念場だと思います。政府を含め、みなさんの協力で感染を止めてもらわないことには病院が大変なことになるだろうなって思います。ヨーロッパは病院の問題があるからロックダウンをする。病院を守るためにロックダウンをしているので。それを国民に理解してもらうよう毎日報道しています。先日、帝京大学医学部附属病院の隣の中学校が「頑張って」というメッセージをかけてくれた写真を拝見しましたが、あれは励みになりますね。

杉本 そうですね。正直びっくりして嬉しかったです。

 フランスでは第一波のロックダウンの時に毎日20時にみんなが窓から出て医療従事者の方々に拍手をしていました。そのぐらい医療従事者の方々に感謝の念が強いです。一方で、差別なんかがあるという話も聞きます。差別なんかを感じたことはございますか?

杉本 私自身は差別を受けたことがないのですが、話を聞いたりはします。コロナという病気をよくわかっていない方がそういう行動にでてしまうのかな、と思いますが、おそらく差別してしまう側の方も身の置き所がないというか、不満をどこにぶつけていいかわからないというのもあると思います。

 皆さんの心構えとかあるのでしょうか。声の掛け合いとかあるのでしょうか。

熊川 働くうえで、病棟ではコミュニケーションをしっかりとることを意識していますし、精神面では産業医のサポートがあります。病院の他部署のスタッフもいろいろと配慮してくれます。

 杉本先生からこういうことに気をつけたらいい、というようなアドバイスをいただけますか?

杉本 感染対策ですが、飛沫、接触感染なのでマスクを外すタイミングというのが重要になります。私たちも、しっかりとマスクを正しく着用できているかどうか、お互いチェックしています。患者さんも含め、どちらかが正しくつけていない場合、感染のハイリスクになります。マスクを外す状況というのは、例えば、食事の時です。食事を複数人でして、会話をしてというのは非常に危ないと思います。食べる時は食べることに集中して、食べ終わってからマスクをして会話する、というのが良いと思います。ファスト・フードとかで感染が広がるという話はあまり聞きませんが、居酒屋とかバーで感染するというのが多い印象ですから、そこが重要かなと思います。マスクは皆さんできることなので、ぜひ正しく使用していただきたいです。

 マスクを外すタイミングが大事という言葉はすごく印象的でしたが、どのタイミングでマスクを外すよう心がければいいのでしょうか。

杉本 基本的に、食事の時以外は着けています。ただし、私の場合、家に帰って家族といる時は外しています。普段一緒に暮らしている人というのは健康状態もわかっていますし、変化があればもちろん注意が必要ですが、家で着けている必要があるかというと、特別な状況がない限り必ずしもないと思います。

 ぼくは息子が高校生で、二人で暮らしているのですけど、彼は若いですから無症状でウイルスを持って帰ってくることもあると思って、できるだけ気をつけるようにしています。換気とか、子供部屋には入らないとか、話をする時はマスクをするとか、しています。

杉本 そうですね。用心しないよりした方がいいことは間違い無いです。それで8割くらいのリスクは避けられると思います。

ザ・インタビュー「コロナ最前線の医師に聞く、コロナに立ち向かうために今必要なこと」



 今、フランスでは医師がテレビに出る時もマスクを外さず出演していますが、新型コロナが流行り始めた頃はフランス政府はマスクは必要ないと言ってしまって、感染が爆発してしまったという悪い事例があります。しかし、今はマスク着用が義務になって、フランス人もみんなマスクをしています。マスクで感染がある程度抑えられているのも事実だと思います。マスクの種類についてですが、ドイツは布マスクが禁止になって手術用のマスクかFFP2という新型コロナウイルスを通さないマスクが推奨されています。フランスも2月8日から学校で手作り布マスクが禁止になりました。やはり、布マスクは避けた方が良いのでしょうか?

杉本 どのマスクも完全にリスクをゼロにはできないと思いますが、飛沫やウイルスの通過率を見ると、今ぼくが着けているフィルターが良いもの、不識布マスクが良いと思います。ファッションで布マスクとかウレタンのマスクも出回っていますが、リスクは上がる印象です。

 あと最後に、飛沫感染についてなんですけれど、あれは目や鼻に入るから危ないのでしょうか。口に飛沫が入って感染することもあるのでしょうか。

杉本 ウイルスは鼻とか喉などの上気道で増殖します。のどの痛みもそのために起こります。また、感染した人の唾液はたくさんウイルスを含みますので、その飛沫が他人の身体の粘膜に付着すると、ウイルスが侵入し感染します。特に新型コロナは呼吸器感染症で、肺炎を起こすウイルスで、下気道の肺にも入り込む入り口がありますから、吸い込んだ空気というのも一つの感染経路として挙げられ、注意が必要です。咳やくしゃみによる飛沫をもろに受けてしまう場合、粘膜に付着して高確率で感染してしまいます。また、マスクをしていても、人は無意識に顔やマスクを触ったりしています。マスクの外側は基本的にウイルスが付着しているものとして考えて、できれば触らない方がいいですし、手洗いも重要です。特に感染力の強いウイルスですので、手に付着したウイルスが粘膜に付着して入り込む可能性はありますから、そこも注意が必要です。

 変異株が流行って、付着力も強くなっていると聞いています。一層気をつけなければならないですね。とてもわかりやすいお話をしていただき、今日はどうもありがとうございました。

ザ・インタビュー「コロナ最前線の医師に聞く、コロナに立ち向かうために今必要なこと」

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posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。