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自分流塾「自分をとりまくこの世界をシンプルにとらえる」 Posted on 2023/07/07 辻 仁成 作家 パリ

よく考える必要はないけれど、ちょっと立ち止まってみたらよいこともある。
悩んでもしょうがないことが多いのがこの世界なのである。
だいたい、無理するだけ無駄なことばっかりだ。
ともかく、世の中、話の通じない人がやたらいる。
一生懸命説明しても、そもそもこちらをバカにしているので、頭ごなしに決めつけている。
耳を傾ける気などないのだ。
そういう人に誠意で向かう必要があるだろうか? 
その努力が報われることがあるだろうか? 
人の批判しかしない人に、どうやって自分を説明するべきであろう。
それをこそ、無駄、というのである。
頑張るだけ損をする。
人に振り回されているな、と思うのであれば、どうしたらいいのか、そんな時は、外に向かわないことである。
自分が今苦しいのは、周りのせいなのだから、マイペースで生きることが大事であろう。
それはとってもシンプルなことである。
今を楽しく生きることに専念すればいいのだ。
自分が壊れそうにないか、自分が無理をしていないか、つねに自分を中心に、自分を自分で見極めて、正しいバランスの中にあるか、自分を一番知るように心掛けて生きることさえできていれば、苦しいものは排除される。
こんなことで自分の大切な人生を台無しにする必要なんかない、ということだ。
話の通じない人を説得してくたくたになるのは、おろかだ、と気づけばいいだけのことである。
80億人もの人がいるこの世界に、もっと自分らしくいられる場所なんか無限にあるのだ、と思えば楽になる。
シンプルに考えればいいのである。

自分流塾「自分をとりまくこの世界をシンプルにとらえる」



まず、自分をとりまくこの世界をシンプルにとらえることが大事だ。
複雑にするから頭が痛くなり、人間関係でうんざりしてしまうのだ。
そこは関係ない、そこから先には行く必要がない。
それ以上のことを抱えるべきではない。
自分がいつでも楽で楽しいと思える世界に生きることが大事だということだ。
つまりすべては自分次第なのである。
自信がないから、シンプルに生きらない、というのであれば、ちょっと待ってほしい。
その自信というものは、誰かが決めるものではない。
「自信」なのだから、自分はまちがいなく、この世界で唯一のものなのだから、その時点で、すでに大丈夫なのだ。
周りと比較するのは愚かなことである。
唯一無二のものが「自分」なのである。
自分は誰かの所有物や一部ではない。明らかに同じものが存在しない唯一なのだから、自信しかそこにはありえないのである。
これはとってもシンプルなことだ。
根拠など必要ない。
それが自分というものだから、ただ、楽になる人生を生きるだけでいい。

自分流塾「自分をとりまくこの世界をシンプルにとらえる」



過去の出来事が今の自分を苦しめるのであれば、今に生きることでそれは解消される。
後悔を引きずるのは愚かなことである。
誰もいない空き地とか広場に行き、その中心に立って、まず、自分の足元を見つめ自分の足を見たら、そこに自分がいることを知ったら、次に、空を見上げてみたらいい。
これが「自信」である。
他の人にはない、自分が自分を信じることなのだ。
自分の気持ちが揺れ動くのはだいたい以前の出来事に振り回されているからである。
広々した場所に行き、自分が地面の上にいることを確認し、空を見上げればいい。
そこには、今、この瞬間、あなたが観ている空がある。
他の人が見ていない空がある。
過去の小さな出来事にいつまでも傷を負う必要はないのだ。
すでに自分はそこにいる。
それが自信なのである。

自分流塾「自分をとりまくこの世界をシンプルにとらえる」



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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。