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自分流塾「努力をした人が、勇気をもって、信念を貫く時、新しい扉は開く」 Posted on 2021/05/04 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、人間にまず必要なものは「信念」だと思う。ほんとうに、それだけだ。
第三者によるあらゆる攻撃に対して、信念がしっかりあれば、それをスルーしたり、相手にしないことは難しくない。
逆に信念がなければ、振り回され、蹴散らされてしまうだろう。
では、信念とはなんだろう?
信念に関して、様々な解釈があるけれど、たとえば辞書を引くと、「正しいと信じて疑わない気持ち」ということになる。
それが社会的に間違えていても、本人がいいと思えば「信念」ということになるのだ。
人が自分の意志で間違いない、と思っていれば全部、信念ということになる。
つまり、心の中心軸である。 

自分流塾「努力をした人が、勇気をもって、信念を貫く時、新しい扉は開く」



信念というのはきっと誰にでもあるもので、信念自体は珍しくない。
この単語は「貫く」という言葉を後ろに配置してはじめて意味が出てくる。
つまり、「信念を貫く」である。
周りの人間というのは奇抜な発想に対して、本当に反対ばかりする。
誰かが新しいことをやろうとすると、ほぼ間違いなく、ただちに「無理だよ。絶対できない」が戻ってくる。
これで諦めてしまう人は、残念なことに、そこまでだ。
他人の言葉であっさり諦めてしまうのだから、残念だけど、その信念は大したことがなかったね、ということになる。
たいがい、信念を曲げてしまうのはこういう外野の意見によってである。
しかし、ここでそういう邪念や雑音をはねのけてやり通しした時、つまり周囲におのずと出来てしまった高い壁を自らの信念で打ち砕き、その「信念を貫いた」時にこそ、新しいことは実現し、画期的な成果を生むことになるのだ。
簡単なことではないけど、可能なことだ、と思うべきである。

自分流塾「努力をした人が、勇気をもって、信念を貫く時、新しい扉は開く」



そこで大事になるのが、「信念の貫き方」ということになる。
信念を高い目標にしてしまわないことが大事かもしれない。
それを生き甲斐だと思えることが大事で、長いスパンで成し遂げる自分の目標ととらえ、出来るだけ、楽しく取り組んでいこう、と間口を緩やかにとって、挑んでいくと、悲観的にならずにすむので、長く続けることが可能となる。
そして、信念の貫き方において最も大事なものは勇気であろう。
背中を押す力のことを勇気と呼んで差支えない。
勇気を違う言葉に置き換えるなら、向こう見ずな力、ということになる。
ちょっと向こう見ずであることも重要で、それがないと、まず、踏み出せない。
大丈夫出来るよ、絶対出来る、と思い込む力のことだ。
そうだ、これがなければ信念は貫けない。
ゲーテの言葉に「あなたにできること、あるいは夢見ていることがあれば、今すぐ始めなさい。向こう見ずは天才であり、力であり、魔法です。さぁ、今すぐに始めなさい」というのがある。
なんとも勇気をもらえる言葉じゃないか。

自分流塾「努力をした人が、勇気をもって、信念を貫く時、新しい扉は開く」



もしかしたらあなたは天才かもしれないのに、あなたではない第三者に、無理でしょう、と言われたことくらいでやめてしまうのは、実にもったいないことだというのがわかる。
やってみなければわからないのに、人の忠告でその才能を葬り去るのだから、実に愚かなことでもある。
挑んだけど無理だと言われ挫折した人がそれだけ多かったのなら、逆を言えば、それは、チャンス、ということにも捉えることが出来る。
信念を貫きとおせば、パイオニアになれるのだけど、無理壁の前で飛ぶことを断念してしまったのは、自分を信じる力が足りなかった、つまり、勇気がなかった、ということになる。
新しいことをやり遂げた人を見てほしい。
それらの人たちは自分を信じる天才だったに過ぎない。
いや、それだけではないだろう、それを裏打ちするために必要なことがある。

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ぼくはそれが日々の努力だと思っている。
コツコツ毎日ギターを練習していなければ、驚異的な演奏はできない。
いくら自分はすごい演奏家になると宣言しても、実際の力がないと人を感動させられるステージを作ることはできない。
勇気の前に大事なことがあった。努力である。
人一倍努力した人には少なからず「自信」が付いてくる。
この蓄積された自信こそが、勇気を生み出すのである。努力もしないで自信をもっていたら、それはかなり危ない。

誰よりも努力をした人が、勇気をもって、信念を貫く時、新しい扉は開くのである。
とっても簡単な方程式ではあるけれど、これが真実であろう。そこに楽観的なスパイスが加われば「無敵」である。なお素晴らしい。
絶対出来る、やってやろう、と向こう見ずに思うことが無敵の中心軸なのである。
さぁ、今すぐ始めようじゃないか。

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posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。