欧州最新情報

パリ最新情報「あなどるなかれ、フランスにおける英国型変異株についてのまとめ」 Posted on 2021/04/28 Design Stories  

日本において、(新型コロナ感染が)全国的に「変異株に置き換わることが予想される」という、厚生労働省助言組織の見解ニュースが目に入った。
感染が広がると重症者が増え、重症者が増えると病院が逼迫し、適切な治療が受けられず死に至る人も出てくる。
その上、この変異株は重症化率、死亡率が従来株よりも高いといわれている。
今日、日本で懸念される状況はまさに、1月から今日(4月28日)までフランスが歩んできたシナリオなのであった。

2021年1月からデザインストーリーズで配信した記事を読み返してみると、フランスに変異株が浸透していく様子がよくわかる。

1月9日、

「今、その恐ろしい出来事の再来のような事態が再び人類をパニックに陥れようとしている。
英国に出現した新型コロナの変異株のことだ。
今日、現在、フランスで発見された変異株の感染者は19人と発表されている。
2020年、2月のことを思い返すならば、この数字は震えあがるほどの予兆を孕んでいる。
しかも、通常の70%増しの増殖力を持つと言われる変異株は、世界各地、アメリカや日本でも発見されているのだ。」

「フランスのオリビエ・ヴェラン保健相がテレビで「変異株の出現は新たな感染症が始まったと思ってもいいくらい、恐ろしいことの始まりだ」と訴えた。」


➡️パリ最新情報「恐ろしい話。変異株出現後の今の世界は、まさに2020年3月の再来」より(1月9日配信)

パリ最新情報「あなどるなかれ、フランスにおける英国型変異株についてのまとめ」

翌日、1月10日、マルセイユで変異株のクラスターが発生。

「このニュースがもしかすると、再びフランスをさらに恐ろしい感染症第2部へと導く新たな序章になるのかもしれない、という不安を覚える。
昨夜、マルセイユで英国由来の変異株の感染者が見つかった。
感染が確認されたのは「イギリス在住で年末に帰国していた人」ということがわかっている。その人物は昨年末、家族と共に英国からフランスに戻ってきていた。
ところが1月8日に、マルセイユの病院で変異株の陽性者であったことが判明した。
彼とその家族は年末年始に、他の親族らと接触しており、続いて、23人がコロナの陽性であることがわかった。」

「フランスでは、英国での変異株流行を受け、クリスマス前から空港や国境でPCRテストを強化し、防疫網を構築していたが、それをすり抜けて感染者がフランス国内に侵入したことになる。
そして、この23人が変異株の陽性者でありクラスターであったならば、通常の新型コロナウイルスよりも感染力が70%増しの変異株ウイルスが、今現在マルセイユ周辺で、どのような速度で拡大しているのか、ということが大きな気がかりとなる。」


そしてその通り、英国型変異株はみるみるうちにフランス全土に広がることになる。

➡️速報・パリ最新情報「マルセイユで変異株クラスターか? 世界の新たな終わりの始まり」(1月10日配信)

パリ最新情報「あなどるなかれ、フランスにおける英国型変異株についてのまとめ」



1月23日には、

「イギリスのボリス・ジョンソン首相は、本日(22日)の会見で、「変異株ウイルスは感染力が高いだけでなく、死亡率も高い」と発表した。」

「60代の男性の場合、死亡率のリスクは13~14 / 1,000とされており、従来のウイルスでは10/1,000であったのに対し、死亡率が高くなっている。
イギリス政府の科学顧問、パトリック・バランス氏は「この数字には不確実性も多いことを強調しておきたい」としながらも、「変異株は感染率の増加だけでなく、死亡率の増加も懸念されている」と述べた。」


➡️速報・欧州最新情報「英国発の変異株、従来型より高い死亡率か!? 英首相発表」(1月23日配信)

と、変異株が従来株より危険であることがイギリスの調査結果で明らかになったと発表された。

パリ最新情報「あなどるなかれ、フランスにおける英国型変異株についてのまとめ」



25日には、フランス科学評議会トップの、ジャン・フランソワ・デルフレシー氏の発言を受け、変異株の拡大をストップさせるため政府はロックダウンに踏み切るのではないか、と予測していた。

「フランスは欧州諸国の中ではコロナ抑え込みに一定の成果を出している。しかし、このまま何もしないでいると、変異株のピークが3月の半ば頃にはやってくるといわれている。
その前にロックダウンをやる必要があるという意見が連日のように起こっている。このような状態を受け、フランス政府は、今週中にも、ロックダウンについて検討に入るであろう、との情報。」


➡️パリ最新情報「欧州で急拡大中の変異株ウイルスによる新たな脅威」(1月25日配信)

パリ最新情報「あなどるなかれ、フランスにおける英国型変異株についてのまとめ」



しかし、フランスはロックダウンは行わず、夜間外出禁止令のみの現状維持を選んだのだ。
多くのフランス国民はロックダウンを覚悟していたので、「本当に大丈夫なの?」と、政府の判断に疑問を抱く人も少なくなかった。

28日に届いたロンドンからの情報では、「イギリス国家統計局(ONS)が27日、イギリスで最初に見つかった変異株の症状の傾向を発表した。」とし、変異株の症状について詳しく触れている。従来株で代表的な臭覚や味覚の喪失が変異株では見られにくい、など、とても勉強になるので気になる方は今一度読んでみてほしい。

➡️ロンドン最新情報「英国型変異株に関する最新レポート」(1月28日配信)

パリ最新情報「あなどるなかれ、フランスにおける英国型変異株についてのまとめ」



そして、変異株が発見されはじめ、ひと月経った2月半ば。
フランスのコロナ感染者のうち、変異株が占める割合が35%に達していた。

「フランス全土のコロナ感染者に占める英国変異株の割合が今週ついに35%に達した。(昨日、ドイツは22%程度という報道が出たばかり)
※英国変異株のフランス全土で全コロナに占める割合は以下である。
2021年1月8日、  3,5%
2021年1月27日、 13,2%
2021年2月5日、  19%
2021年2月11日、 20~25%
2021年2月15日、 36%
という拡大率を示している。」


➡️速報・パリ最新情報「フランスの変異株、全コロナ陽性者に占める割合35%に拡大」(2月19日配信)

パリ最新情報「あなどるなかれ、フランスにおける英国型変異株についてのまとめ」



ロックダウンに踏み切らなかったフランスは、3月に入ると、1月に専門家たちが注意喚起していた通り、歯止めが効かない変異株のピークが見えてきた。変異株の感染力が感染者数にも顕著に現れるようになってきたのである。

「夜間外出禁止令などの措置にもかかわらず、英国変異株の威力は未だ衰えず、ここ2週間でじわじわと感染が伸びているのが現状。現在、フランスの1日の感染者は毎日2万5000人ほど。イル・ド・フランスの汚染水調査では検出されるコロナウイルスの50%が英国変異株だと言われている。」

ちなみに、フランスの4月24日のデータではその変異株の率が82,8%(パリ近郊は63,5%)。
南アフリカ株は5,1%(パリ近郊は9,8%)である。
このことから、1月から4月末までの4ヶ月で、新規新型コロナの感染がほぼ変異株に置き換わりつつあることがわかる。

➡️パリ最新情報「イル・ド・フランスの汚染水調査では検出されるコロナウイルスの50%が英国変異株」(3月9日配信)

パリ最新情報「あなどるなかれ、フランスにおける英国型変異株についてのまとめ」



歯止めが効かなくなってきた3月末。1日の感染者は4万人を超え、パリ近郊では集中治療室の使用率が150%超えまで膨れ上がった。
フランス政府は、学校閉鎖も含めたロックダウンを行わざるを得なくなったのだ。
ワクチン接種に力を注ぎ、ロックダウンを極力避けたかった政府だが、変異株の猛威にワクチン接種が追いつかなかった。

「今年の1月にロックダウンに踏み切らなかったことが今のこの感染拡大の大きな原因だとの批判が強まっていることに対して、マクロン大統領はこれまで仕事を続け、教育を続けることができたことは大きい、と自分の判断を肯定した。
そのうえで、集中治療室にいる人の44%が60歳以下であることなどを挙げ、現在、変異株の出現が原因でフランスは秋のロックダウン時より状況が酷くなっている。特にここ数週間でヨーロッパの各地で感染が急激に拡大している、と訴えた。
逼迫している病院を守るため、具体的な措置として、集中治療室のベッド数を1万床増やし、現在19地域で行われているロックダウンを全国に拡大することを説明した。
ロックダウンの内容は現行通り。テレワークを基本とし、これまで通り、19時以降の夜間外出禁止、自宅から10km以内であれば外出証明書は必要ない。」

2020年春から学んだことや経済、長く規制を余儀なくされている国民の精神状態を考慮し、去年とは比べものにならないような緩いロックダウンであったが、マクロン大統領は「辛抱の4月」と、国民に理解を求めた。同時に、ワクチン接種がこの状況への解決策とし、フランスはワクチン接種に最大の力を注いでいることを強調した。

➡️パリ最新情報「ロックダウンが全土に拡大、辛抱の4月と大統領が協調」(4月1日配信)

パリ最新情報「あなどるなかれ、フランスにおける英国型変異株についてのまとめ」



1月の記事に、「レストランの再開が4月6日なるという噂」とあるが、4月3日からフランスは3度目のロックダウンに入り、4月28日現在、10月末から閉鎖を余儀なくされているレストランは閉鎖したまま。

➡️パリ最新情報「もしかすると、パリのレストランは夏前まで開かないという噂が、・・・」(1月21日配信)

5月3日からロックダウンが段階的に解除され、5月半ばからレストラン、バー、文化施設などの再開予定という現状ではあるが、それもこれも、1月からじわじわと広がった感染力の非常に強い英国型変異株による新たなパンデミックの出現が政府のプランを狂わしたことは間違いない。
厳しい秋、冬、春を乗り越え、街に活気が戻るまで、あともう一息、フランス国民の辛抱は続く。

日本政府は比較的短期の緊急事態宣言で効果を出そうとしているようだが、そのためには、間違いなく人との接触を極度に減らす必要がある。
ここは辛抱のゴールデンウィークで頑張って欲しい。フランスのような状況にならないために。

パリ最新情報「あなどるなかれ、フランスにおける英国型変異株についてのまとめ」

地球カレッジ
自分流×帝京大学