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パリ最新情報「いつまで続くか、愛煙家たちを苦しめるタバコの値上げ」 Posted on 2022/08/15 Design Stories  

近年、世界中でタバコの値上がりが激しく愛煙家の人々を苦しめているが、フランスも例外ではない。7月、フランス政府は、一部の銘柄の更なる価格の値上げを施行した。2000年では3.20ユーロだったタバコ1箱の平均価格は、2005年には5ユーロ、2010年で5.65ユーロ、2015年で7ユーロ、2020年で9.95ユーロと上がり、そして2022年、ついに10ユーロとなった。

止まらないタバコの値上げ、政府はその理由のひとつを「予防可能な死因」の第一位である「喫煙」を少しでも多く排除するためとしている。喫煙は、肺や呼吸器官を始め、身体へ深刻な影響を与えるリスクを格段に上げる。
フランスで売られているタバコのパッケージには、喫煙のせいでボロボロになった臓器や口内、身体の一部の他、無数のチューブに繋がれベッドに横たわる人の姿など、思わず目を逸らしたくなるような写真がバリエーション豊かに印刷され、視覚的にも喫煙欲を削ぐような対策をしている。
また、禁煙に本気で取り組む人のために、フランスは2019年から、診察代や医師から処方された禁煙パッチ代などの65%を国民健康保険でカバー(任意の保険に加入していれば全額返金も可能)できるようにするなど、禁煙者を後押しする体制も整えている。

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一方で、度重なる値上がりにより、経済的に負担となった喫煙者が犯罪に走ってしまうケースも急増している。6月、元国際的柔道選手が85000カートン(85万箱、約16トン)のタバコと共に逮捕されたとニュースになった。彼はタバコを組織ぐるみで密輸した罪で、皮肉にもタバコの価格改定が施行された7月1日に起訴され、収監されることとなった。

更に今月では、フランス北部で14トンの偽造タバコが押収されている。喫煙者本人ではなく、経済的に困っている喫煙者を騙そうと、偽のタバコを大量生産する組織も増えているのだ。昨年はフランス国内で400トン以上の偽造タバコが押収されており、2020年と比較して41%も上昇しているとニュースは報じている。元々フランスは、東欧からイギリスへのタバコ密輸の陸路中継地点として使われることがあるそうだが、密売人の増加が近年更に著しくなっているため、税関捜査官が以前に増して目を光らせている。時々、メトロの改札を出たところで、大量のタバコの箱を見せながら「タバコいらない?安くしとくよ」と言って回っている集団に出くわすことがある。パッと見た感じではあの有名なマルボロのパッケージだが、中身は何が入っているか分かったものではない。タバコ屋で買うよりも安く売っている時点で、密輸品か偽造品である可能性が高い。そういった集団は、警察が姿を現すと一瞬でその姿を消す。

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WHOの調査によると、国別の喫煙率は、日本は20.1%で世界89位、フランスは33.4%で世界19位だそうだ。ただ、男女別で見ると興味深い結果が分かる。日本は男性33.7%、女性11.2%であるのに対し、フランスは男性35.6%、女性30.1%と、日本と比べてフランスは男女差があまりない。確かに街を歩いていても、見かける喫煙者にあまり男女差を感じない。歩きタバコもフランスではまだ多く、喫煙に関しては日本よりフランスの方がまだ寛容と言える。

とは言え、日本にしてもフランスにしても、愛煙家への風当たりは年々強くなっている。WHOが5月31日を「世界禁煙デー」と定めた1989年時点ではさほど問題視されていなかった喫煙者も、今では価格を上げられ、吸う場所は制限され、嫌煙家からは糾弾され、肩身の狭いことこの上ない。
終わりの見えない価格上昇にどこまで耐えられるか、愛煙家たちの根競べは続く。

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