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パリ最新情報「フランス、冬の深刻な電力不足を懸念。節電呼びかけへ」 Posted on 2022/07/22 Design Stories  

 
フランス政府は7月、今年冬に懸念される深刻な電力不足に対して警鐘を鳴らした。
電力不足の背景には、ロシアに対して行った経済制裁への代償がある。
6月15日には、フランスはロシアからの天然ガス供給を止められた。
さらにはロシアと欧州直結のパイプラインであるノルドストリーム1も「点検」の名目を盾に、7月11日から切断されてしまっていた。(7月21日に輸送が再開されたものの、供給量は通常を大幅に下回る)

そもそも欧州は、2022年末までにロシアの天然ガスの禁輸を行う予定だった。
それまでにエネルギーを備蓄しようと試みていたのだが、ロシアに先手を打たれプランが狂ってしまったのだ。
そのため危惧されているのが、今年冬の大規模な電力不足である。
 

パリ最新情報「フランス、冬の深刻な電力不足を懸念。節電呼びかけへ」



 
これを受けた欧州委員会は7月20日、22年〜23年冬に向けてEU域内のガス供給を確保するための緊急計画を発表した。
欧州委員会は、EUへのロシアのガス供給がすべて断たれるという最悪のシナリオを設定した上で、27の加盟国に対し、8ヵ月以内にガスの消費量を15%削減するよう提案している。

フランスでは先日、EDF(フランス電力)の国有化が発表されたばかりだ。
これは同社が原発の稼働停止、原発新設の遅れや予算オーバーなどで厳しい経営を迫られていたためでもある。
フランスには原発が56基もあり、電力が不足することはないと思われていたが、実情はまったく異なるものだ。
国内の複数の原発では亀裂が見つかっており、老朽化した原子炉の点検作業などが続いている。
そのため56基の原子炉のうち、29基は現在停止しているという状態なのだ。

ウクライナ問題が起こる前の昨年末も、こうしたエネルギー不足からフランスはドイツに電力の供給を頼らざるを得なかった。
ただ今年はドイツもガス供給量の削減に身構えている。
さらにドイツではこの冬に3基の原子炉を停止する予定であり、最悪のタイミングであることを忘れてはならない。
こうした状況を考えると、フランスはもはや他国に頼ることはできないだろう。
 

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フランスに残された解決策は、どうやら本格的な「節電」でしかなさそうだ。
オリヴィエ・ヴェラン政府報道官は7月20日、フランス国民に向けて「休暇中はWiFiルーターのコンセントを抜いて」など節電を呼び掛けた。
「一人の少しの節電が、秋冬に確実に使えるエネルギーになる」とし、エネルギーを消費し続けるコンセントの放置などに警鐘を鳴らした。

またフランス企業の節電対策も広がっている。
フランスのスーパーマーケット各社は、秋に実施される「節電プラン」に合意。
各店舗で閉店後にすぐ看板の灯りを落とし、営業時間内は店内照明の30%を削減するという。
これは全国で10月15日から始まる見通しだ。
 



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エッフェル塔の夜間点灯も停止が検討されており、どこまで気温が下がるかにもよるが、今年はもしかしたらクリスマスシーズンのイルミネーションも見られないかもしれない。
フランスでは、エアコンが普及していないため夏に電力ひっ迫の心配はないのだが、寒い冬では暖房の使用量が一気に増える。
冬よりも電力消費が少ない現在のあいだに、エネルギーの備蓄を進めるべく民間でも対策が急がれている。

「ロシアのガスの全面カットに備えよう」、仏メディアはこう呼びかけているが、たとえ戦争が終結してもエネルギー問題がすぐに解消するとは思えない。
フランス政府は、こうした迫りくる電力問題について「エネルギーの自立を加速させることを意味する」と繰り返し主張している。(セ)
 

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