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フランス人のインテリアセンス Posted on 2026/05/21 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
フランスで暮らして思うことですが、フランス人のインテリアセンスって、実は彼らのファッションセンスよりもずっと上だと思うことがあります。
ブランドはすごいんですが、ファッションセンス、とくに、男性の服装はかなり、やぼ、です。すいません。マダムはすごいですが・・・。笑。
でも、男性陣のインテリアセンスは、なかなか、あなどれないものがあります。っていうか、北欧級ですね。? 

どの家に招かれても、本当にその人の生き方がきちんと表現されていて、楽しいし、興味深いし、芸術的だし、勉強になるのであります。
へー、こういうアパルトマンに住んでみたいなぁ、とどこの家でも、だいたいため息がこぼれてしまうのでありました。

フランス人のインテリアセンス

一部屋一部屋にその人の喜びや幸せや歩いてきた道のりがきちんと見えます。
家具の選び方も、壁紙の色合いも、テーブルの上の置物まで、とにかく微に入り細に入り、素敵過ぎて、褒め言葉がおいつかないわけです。
もちろん、パリジャンもセンスいいんですが、田舎の人たちも、まんべんなく、みなさん、家のインテリアには一過言ありますね。
ガレージがもはや、工場のようになっていて、そこで日曜大工とかやって、ペンキとか自分でぬっちゃうんですからね・・・。
お金もかけません。ケチですから・・・。

窓と外の風景との関係だけでも、すでに一つのアートになっているわけです。全てが美しいです。

フランス人のインテリアセンス

フランス人のインテリアセンス



見える世界がそもそもセンスがいいので、こういうことが出来るのだと思うのですが、そこで暮らしている人がいつも見ている世界が、来客者であるぼくを魅了するのも事実です。
そういう質の深い暮らし、ぼくも憧れるのだけど、それはその人が何を見て、何に感動をして、何を収集して、どう生きたかが出るものなのだな、と改めて思わされるわけで、ぼくもこの25年間、見習ってきました。

フランス人のインテリアセンス

フランス人のインテリアセンス



ぼくはデンマークやオランダまで探しに行くくらいの椅子フェチなのですが、(かなり集めました。椅子だらけです)、しかし、フランス人の家の椅子は本当にその人そのものを現すほどに人間味が溢れていて、どこでこれ見つけたの、と毎回驚くものばかり。
みなさん、骨董市などで探したり、骨董屋を回ったり、古い親戚の家から持ってきたり、いろいろなのだろうが、本当にいいものを見極める力と労力が凄い。
老夫婦が二人で椅子を運んでいるところに出くわしたこともありましたが、その椅子がまことに見事でありました。あの乾いた木の美しいカーヴにぼくはすれ違いざまにため息をついてしまったのです。

フランス人のインテリアセンス

フランス人のインテリアセンス



それから天窓とかサンテラスとか、光りを取り入れることへの寛容さに感動をしてしまいます。知り合いの家の中央にあった階段とその上に広がる天窓との関係に眩暈を覚えたことがあります。
ぼくはそこで猫になりたい、と思ったほど・・・。にゃああ。
壁にかかっている一枚の絵のなんとも押しつけがましくないアート感にも心をくすぐられますね。

フランス人のインテリアセンス

フランス人のインテリアセンス



暮らしって、本当に大事で、ぼくは今、自分の終の棲家を探しているので、どうしても、家具とか壁紙とか、いわゆるインテリアに目が行ってしまうのです。
そもそもぼくはコロナ禍になるずっと前から、出歩かない家派人間なので、暮らしを大切に、暮らし周りに心を配ってきました。

それでも、フランス人のインテリアセンスには脱帽なのであります。
インテリア雑誌の数倍上を行く、各人のインテリアのセンスは昨日今日磨いて出来あがったものじゃない。
何世代も前から受け継がれてきたちょっとした家具がその中心に置かれていて、そこに座っていたであろう曽祖父の体躯までが想像できる、暮らし。
ぼくは25年前にフランスに渡ってきたので、歴史が浅く、及びもしないけれど、自分が愛する家具はぼくの血を受け継ぐものたちに分け与えたいと思って、今を生きているわけです。
暮らしはその人を現す。

フランス人のインテリアセンス

自分流×帝京大学

フランス人のインテリアセンス

辻仁成 Art Gallery

フランス人のインテリアセンス

Posted by 辻 仁成

Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。