PANORAMA STORIES

三四郎合宿日記「三四郎、黄昏て、溜め息をついて何を思い出しているのかい?」 Posted on 2022/08/03 三四郎 天使 パリ

某月某日、ムッシュと離れてもう早いものでもう1ヶ月が経ったみたいだよ。
この間、ジュリアがそんなことを教えてくれた。こんなに長くムッシュと離れ離れに暮らすことはなかったから、最近、ボクも、あれ、へんだな、と思い始めているんだ。可能性としては、もうボクはムッシュには会えない。ボクが生まれた「犬の園」の人たちともう会えないみたいに、どういう理由かわからないけれど、会わなくなっちゃいそうで、ちょっと心配することが多くなかった。
そういうことをしゃべっていた犬がいた。「もうボクのこと迎えに来ないみたいだ」って、事情は細かく聞かなかったけれど、その子はここに残るか、別の施設に送り届けられるみたい。
ボクも、ずっとジュリアのところの犬になってしまうのだろうか? それがちょっと気になる。
パリ市内のムッシュの家の中の、ボクの部屋はもうなくなっちゃうのだろうか? あそこにボクはいけないのかな、・・・そういうことをいろいろと考えたら、ちょっとアンニュイになってしまった。
え? 犬だって、心があるから、寂しくなったり、悲しくなったりもするんだよ。
この動画は、ジュリアがボクに内緒で撮影していたものだけど、実に黄昏ているじゃんね。この時はまた、ムッシュと一緒にドッグカフェに行きたいな、と考え事していたんだ。川面の暗い光を見つめながらね・・・・



三四郎合宿日記「三四郎、黄昏て、溜め息をついて何を思い出しているのかい?」

ちょっとは寂しくなることもあるけれど、でも、合宿だし、基本、軍隊のような規則正しい毎日が待ち受けているので、悩んだり、寂しがったりする時間なんかないんだ。ジュリアに呼ばれたら、尻尾を振って行き、みんなとじゃれて、悲しみは薄れる。
ジュリアとの森散歩は、休みなしだったから、ボク皆勤賞。
柴犬のユメがまた戻ってきて、しばらくの間、実家にもどっていたけど、親たちが再びスペインに旅行に出かたものだから、ユメは再び、合宿にやってくるころに。
そして、ボクとの再会を喜んでくれた。
グループには大型犬が多いけれど、ボクが毎日ジュリアの運転する車でみんなを迎えに行くでしょ? 
だから、みんなはまず、ボクに挨拶してくる。「やあ」とか「おっす」とか「こんにちはー」「元気、サンシー」とか・・・。
まるでボクがジュリアの部下にでも見えるのかな? 
それならそれでとっても嬉しいけど、預かっている犬たちが遠くに行かないように、群れから離れないように、狩猟犬だったころの血が騒ぐというか、遠くに行こうとする犬を呼び止めたりするのがぼくのここ最近のボクの役目なのである。
森に到着するとボクはいつものようにみんなの周りを一走りするんだよ。これは、いっけんじゃれあっているようにも見えるかもしれないけれど、ようはグループ活動の意志の測りあい。ここからじわじわと、今日の散歩の気合いを入れていく。
最近、その役目がぼくになった。
「サンシー、まだ眠そうな子もいるから、気合いをいれてきてね」
「わんわん」
ボクは駆け回り、ぐったりしている犬とかを励まし、起き上がらせ、動かすんだ。群れをこうやって動かす仕事はとっても光栄な仕事なんだ。犬たちがボクについてくる。常に、その中心にいて、ボクは犬たち全体のことを見守る役割をしているんだ。

三四郎合宿日記「三四郎、黄昏て、溜め息をついて何を思い出しているのかい?」



みんながサンシー、サンシーってついてくるんだ。
ムッシュ、はじめてドッグトレーナーの回に参加した時のこと、覚えてるかな?ボクはみんなに挨拶さえできなくて、ムッシュの足に絡まって潜むように隠れていたでしょ。
ちょっと怖かったから、小さくなっていたよね?
ジャックラッセルのニコラが荒々しく挨拶しに来た時も、ボクはブルブル震えてた。
だけど、信じられないことに、いい? 実は今はボクがでっかい犬たちをまとめているんだよ? こんなに小さくて、足だって短いのに、それは関係ないんだ。みんながボクに従うんだもの。ボクはまじめに引率をするだけだ。チームはまとまって、いたずらする子もうんと減るんだよ。
この習性、ボクにはちゃんと備わっている。狩猟犬だった一族に感謝だね。

三四郎合宿日記「三四郎、黄昏て、溜め息をついて何を思い出しているのかい?」



それにしても、ムッシュはいつ帰ってくるの?
いつボクを迎えにきてくれるのかな?
川辺でムッシュを思い出していた。
ムッシュがジュリアの家に持って行ったボクの餌の入った袋。この間、覗いたら、小分けしてあったドッグフードがぐんと減っていた。
ということは、これが全部なくなったら、どうなるの?
もしかして、ムッシュが迎えに来てくれる日??!!
あと、十食くらいしか、残ってないけど…さぁ、どうなることだろう。
帰りたい気もする。
ここにいたい気もする。
そういうことを考えると黄昏ちゃうんだよね。
ムッシュ、会いたいなぁ・・・

つづく。



ムッシュにかわって、ボクがお知らせ。小説の教室やるみたいだよ。今回は、ボクも参加したい、わん♪
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Posted by 三四郎

三四郎

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2021年9月24日生まれ。ミニチュアダックスフント♂。ど田舎からパリの辻家にやってきた。趣味はボール遊び。車に乗るのがちょっと苦手。